自ら考え、英語で発信する子どもを育てたい
グローバル化、少子高齢化、人工知能といったテクノロジーの進化。数十年後の日本がどのように変化しても、今の子ども達が生き抜いていけるように。気づかいや思いやりといった日本の美徳を持ちながら、国際社会に自分の意見をしっかりと伝えられる人間を育てたい。
そんな考えから、内田氏は英語で保育と教育をするプリスクールを大阪市内に開いた。2015年、35歳の頃だった。
15年間、公務員として市役所で行政に携わってきた。教育関係ではなかったが、市民全体の最適を求めるあまり、個々の対応ができない立場をもどかしく感じるようになったという。自身の子どもが産まれたことを契機に、これからの日本を支える子ども達と直接つながる仕事をしたいと考えるようになった。
起業家向けの講座やセミナーに参加し、保育園を経営する知人を訪問。経営と保育の両面で学びを深めた。融資の審査に通った3カ月後、「ハピオスインターナショナルプリスクール」を開園。めまぐるしい日々だったが、何よりも大切にしていたのは起業のテーマ。「子どもの成長に関わることならこの先もブレがないと確信していました」。
園では1歳からの子どもを預かり、人として基礎となる力を育んでいる。「ただ英語を学ぶのではなく、まずは自ら考えることが重要。英語は自己表現のためのツールとして捉えています」。
ネイティブスピーカーにこだわらない外国人と日本人の英語講師、それに保育士。多彩なスタッフは内田氏の考え方に共感して集まってくれた。「用意された英語の文章なのか、本当にその子から出てきた言葉なのか。保育の専門家にはわかります」。
2018年度からは、新たに企業主導型幼稚園として、もう1園の運営もスタート。契約を交わした企業の社員が託児所として利用できる制度だ。
認可外の保育施設にとって、行政機関の関わりが得られるのは「大きなメリット」。整備・運営の助成金も得られた。「広い施設に引っ越し、自然素材の空間に改装。保育料を下げられる分、間口も広がります」。オーガニック食材に精通した調理師と栄養士も雇用し、100%オーガニック食材を用いた給食もスタートしている。
保育施設の運営は、子どもの命や人生を預かる重い仕事。「起業以来、大変なことばかりでしたが、子ども達の笑顔やスタッフの成長に手応えを感じています」。より良い社会への変革を、自らの手で起こし始めている。
(取材・文/衛藤真奈実 写真/Makibi)