《講演録》お客様も社員もワクワクさせる経営術~UDS流・付加価値を生む“組織の企画力”の育て方【前編】
>>> UDSに入社。「キッザニア東京」を成功に導くも――
――その後のキャリアはどうなったんですか。
上越での仕事では、事業は成長したけれども経営がダメだったなという反省があったので、次は経営をちゃんとやりたいという思いがありました。でも、起業するほどアイデアもお金もないし…と思っていたところ、人材紹介会社の担当者のうち一人だけがスペックじゃない部分で僕の話をすごく熱心に聞いてくれて、その方から紹介されたのがUDSの創業者で現会長の、梶原でした。UDSが建築・住宅系のベンチャーと聞き、専門外なので断ろうと思ったんですが「絶対合うから」とすすめられたので会うと、すぐに意気投合。自由に経営も任せてもらえるということで、入社しました。
――UDSに入ってからは「キッザニア東京」のお仕事をされたんですね。
「キッザニア」はメキシコから来たものの、前例となるモデルもなくてスポンサーも一社も集まらずお金もない、と運営会社が困っていたところで我々が入らせていただいて、筆頭株主になりました。這ってでも…という思いで自力でスポンサーを決め、内容的にも自分がやりたいこととも合致していたので、とても楽しくやりがいがありました。
――そんな中、またもや逆境が訪れるんですよね。
2008年、民事再生をすることになってしまいました。当時、沖縄で360億円規模のホテルを2か所同時に開発していたんです。ところが、サブプライムローン問題などの煽りを受けて、返せない頭金だけが残ってしまった。黒字倒産し、民事再生手続きを取りました。
――大変だったんじゃないですか。
大わらわでした。普段はとても健康なのにその時は肺炎にかかってしまったりするほどで。400人いた社員もほとんど去ることになってしまいました。
>>> 上場よりも、世の中に何を残すか、自分たちはどう生きたいか
――その出来事で学んだことはありましたか。
上場を前提に複数のベンチャーキャピタルが入っていたんですよ。そのプレッシャーの中でやる意義が実は、見えていなかったんですね。本当に上場したかったのか、する意味あるのかということが。「上場しよう」という合言葉があれば、ある程度社員が同じ方向を向ける部分はあるけれども、それよりも何をつくりたいか、世の中に何を残すか、自分たちはどう生きたいかという部分をしっかりと持たなければいけないな、と。その方が実のある目標になると実感しています。
――それでは、今まで歩んでこられた人生での教訓はなにかありますか。
世の中、失敗の方が注目されるんだということですね。上越ウィングで言うと、日本一のショッピングセンターということで話題になったときでも「新潟日報」の3面記事だったのに、不渡りが出た途端に1面記事になりました。
また、現在中高生へのキャリア教育にも参画しているのですが、中高生に色々な話をしても、一番響くのは「失敗話」だったりする。だから、失敗から学んだことを伝えることで何か世の中や若者の役に立てるのでは、と思っているんです。
(文/今中有紀)
<後編に続く>
◆第二部 「ワクワクさせる」会社の作り方
~UDSの独自性あるマネジメントのあり方やマーケティングの考え方などに迫る~
中川敬文氏 UDS株式会社 代表取締役社長
1967年3月生まれ、東京都出身。関西学院大学卒。平成元年4月株式会社ポーラ化粧品本舗(現株式会社ポーラ)入社。平成3年1月株式会社オーディーエスに入社し、翌年7月同社上越ウィングマーケットセンター開設事務局ディレクターを務める。平成11年2月株式会社都市デザインシステム(UDS)入社。平成13年6月取締役、平成15年6月代表取締役副社長を経て、平成23年1月代表取締役社長就任。コーポラティブハウス、キッザニア東京、LEAGUE(コワーキングスペース)、RICOH Future House、薩摩川内市スマートハウス、練馬区立こどもの森、滋賀県首都圏情報発信拠点「ここ滋賀」等、企画・コーディネイト実績多数。http://www.uds-net.co.jp/
山崎大祐氏 株式会社マザーハウス 取締役副社長
1980年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中にベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧困・開発問題に興味を持つ。2003年、ゴールドマン・サックス証券に入社。エコノミストとして、日本およびアジア経済の分析・調査・研究や各投資家への金融商品の提案を行う。2007年3月、同社を退社。大学時代の竹中平蔵ゼミの1年後輩だった山口絵理子が始めたマザーハウスの経営への参画を決意し、同年7月に副社長に就任。マーケティング・生産の両サイドを管理する。マザーハウスは途上国でバッグやジュエリーを生産。国内27店舗、香港および台湾7店舗で販売している(2018年3月現在)。https://www.mother-house.jp/