産創館トピックス/講演録

≪講演録≫“ものづくり×ダイバーシティ”多様な人材の活用で企業を活性化!

2017.02.17

《講演録》2016年12月13日(火)開催
【ものづくり経営力強化セミナー】”ものづくり×ダイバーシティ”多様な人材の活用で企業を活性化!

多様な人材を活用する「ダイバーシティ経営」が、いま注目を集めている。「平成27年度 新・ダイバーシティ経営企業100選」に表彰され、製造業の女性経営者で組織する「ものづくりなでしこ」の代表幹事も務める渡邊弘子氏が、自社で実践する「ダイバーシティ経営」について講演。パネルディスカッションでは、女性経営者たちが本音を語った。

■第1部 講演 “ものづくり×ダイバーシティ”多様な人材の活用で企業を活性化!
講師:渡邊 弘子氏 富士電子工業株式会社 代表取締役 ものづくりなでしこ代表幹事

高周波焼入のリーディングカンパニー「富士電子工業」

まずは、当社の紹介をさせてください。富士電子工業は、八尾市に本社がある資本金8,000万円の中小企業です。電磁誘導を利用した誘導加熱装置の設計・製造・販売と、その装置を使った焼入など熱処理の受託加工を行っています。焼入とは、金属部品を加熱・冷却して部品の強度を上げる技術で、部品をより小さく軽くできることから、自動車の燃費向上や小型化に貢献しています。

主な高周波焼入部品は、自動車ではエンジンのクランクシャフトやカムシャフト、足回りの等速ジョイントなど。形状が複雑なクランクシャフトの焼入設備のマーケットシェアは、日本では80%以上。自動車メーカーのほぼ100%が当社のお客さまです。世界でも20%のシェアがあり、20カ国以上に設備を納入しています。

2014年に、自動車クランクシャフト向けの高周波焼入設備で、経済産業省の「グローバルニッチトップ 企業 100 選」を受賞し、2015年には、同様のアイテムで「ものづくり日本大賞優秀賞」をいただきました。

「平成27年度 新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞

「ダイバーシティ経営」とは、企業が多様な人材を活かし、能力を最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを誘発し、価値創造を実現する経営手法のこと。つまり、女性や外国人、ハンディキャッパーの力を用いて、経営力を高めるということです。

2016年3月、富士電子工業は、経済産業省が実施する「平成27年度 新・ダイバーシティ経営企業100選」に表彰されました。100選といっても、応募総数約150社から表彰されたのはたった34社(大手企業20社、中小企業14社)。

表彰はうれしいことです。でも、そんなに難しいことをしているわけではないんですよ。経営者からすると、少しだけ時間とお金をかけて、ちょっとだけ待たなくてはなりませんが。これから私がお話しすることを、参考にしていただければと思います。

「ダイバーシティ経営」を進めた背景と課題

日本の女性の就業状況がM字カーブであることをご存じですか? 出産や子育てに手のかかる20代後半〜40代前半に、就業しない女性が増えるからです。なかでも、関西の女性就業率はめちゃめちゃ低い。一番下が奈良県。大阪は下から2番目の46番目。もし、関西の女性就業率を全国平均値まで引き上げたら、GDPが1.5兆円上がると言われています。

当社も「ダイバーシティ経営」に取り組む前は、女性社員が結婚・出産を機に退職、もしくは一度復帰しても退職してしまうという状況が続きました。さらに、男子社員も介護で仕事を辞めるという事態に。本人にとってはキャリアの喪失、会社にとっては育成してきた社員の痛い離脱です。

また、当社も海外との取引きが増え、商社を介したり、中国語の現地通訳者を雇ったことがありましたが、なにしろ熱処理の専門用語が難しい。伝えたいことがお客さまに伝わらないうえに、時間と費用がかかるという状況でした。