ベテランのノウハウを継承したい 新卒採用を初めて実施社内にも活気
当社は、お客様の要望に応じて粉体、液体の計量・混合・輸送するための最適な設備の組み合わせを設計し、施工まで行っています。担当するのは技術営業の社員。施工が始まると現場にかかりっきりで、かつ瞬時の判断を求められることが多く、この仕事は良くも悪くも「個人商店」の集まりと言われることがあります。当然、多くの経験を積んできた人材はお客様にも重宝がられ、当社を引っ張るのも60代の社員たちです。
しかし、いつまでもこの世代の社員に頼り続けるわけにはいきません。個人に属しがちな仕事のやり方も組織で進められるように変えていく必要がある。そのためには60代の社員たちのスピリッツを若手が受け継いでいかなければならないのですが、残念ながら中途採用の社員はなかなか定着率が低いのが現状です。そこで1年半前に、新卒採用のための実務を学ぶ経営者向けの勉強会に参加し、初めて新卒を募集しました。
採用説明会では、当社が理想とする1人前の技術者像を掲げ、そのレベルに到達するまでのステップを見せました。まずは機械の名前を覚えるところから始まって、現場に出て、見積りが出せるようになって、お客さんとコミュニケーションを取って、設計が出来るようになって、と。そして、それぞれの段階に何年で到達してほしいかというイメージも示しました。仕事柄、土曜、日曜に出勤することも多いのですが、お客様に求められたことを解決することによって喜んでもらえることのやりがいを伝えました。
その結果、昨年、大阪府立大学、近畿大学卒の2人を採用し、ベテラン社員も後継者を養成しようと厳しく育てており、新卒社員は時に突き放されながらも、どん欲に学んでいっているようです。また、これまで後輩がいなかった30代の若手社員にとっても新卒社員が入ってきたことで刺激を受けたのか、ずいぶん頼もしくなってきました。
今後は海外での受注案件が増えてきます。海外の場合、施工業者も自分たちで見つけて、現場で判断してどんどん仕事を進めなければならないので負担も大きいが、やり甲斐はある。現在も、タイでイチから工場を立ち上げる大がかりなプロジェクトが始まっており、2年目の社員のうちの一人も現地にはりついています。「2年目で海外に行かせてもらえるなんて」と本人も意気に感じているようです。定着はしてほしいですが後は本人のやる気次第。そのための場は与えていきたいと思っています。
▲若手の社員の教育は現場。豊富な経験を持つ60代のベテランの社員と一緒にプラント開発の現場を体験することで、自身の血肉にしていく。
▲新卒採用に向けて、野知社長が参加した経営者向け勉強会。若手社員による面接や質問事項を早速採用活動で実践した。
森田工業株式会社
代表取締役
野知 康平氏
設立/1955年
従業員数/22名
事業内容/食品、鉱石、化学、プラスチック、繊維業向けなどに粉粒体や液体を特性に合った方法で貯槽・輸送・計量・混合・脱気するまでの一連の設備を顧客の要望に応じオーダーメードで設計、施工するほか、空調・集じん設備の設計・施工も手がける。