【長編】苦しみから生まれた「こどもミュージアムトラック」が社会を笑顔に。
子どもの絵でトラックをラッピングする「こどもミュージアムプロジェクト」を進める宮田運輸。トラックに描かれた子どもたちの絵は運転士はもちろん見る人の心を和ませ、事故の抑止にも貢献している。
なぜ同社はトラックにラッピングを始めたのか。宮田社長に、「こどもミュージアムトラック」が生まれた経緯、取り組みにかける思いについて聞いた。
父の日に描いてくれた娘の絵
取材をお願いしていた13時半の少し前に宮田運輸に到着すると、広い駐車場の真ん中に1台のトラックが佇んでいる。近くで見ると、納車したての新車のように細部までピカピカ。ステンレス部分に顔を近づけると鏡のように自分の顔が映る。
「これが『こどもミュージアムトラック』の記念すべき第1号車ですわ」。
大きな体に汗を吹き出させながら、そう説明してくれたのは宮田社長。取材当日は35度に迫る猛暑日で、取材班も照りつける太陽に全身をあぶられながら話に耳を傾ける。
「背面を見てください。ほら、可愛い絵が描いてあるでしょ」。
宮田社長に案内されてトラックの後ろ側を覗き込むと、子どもが描いたトラックの絵と、「お父さんいつもありがとう」「あんぜんうんてんでがんばってね」という言葉が一面にラッピングされている。
「このトラックの持ち主が彼、ドライバーの尾本です」。
宮田社長に紹介された尾本さんは、はにかみながら絵の説明を始める。
「これはいま中学3年の娘が5歳のとき、父の日に描いてくれた絵なんです。私がダッシュボードに飾っていた絵をもとにラッピングしてもらいました」。
この尾本さんのトラックが納車されたのは2年前。しかしその歳月を感じさせない手入れの行き届いた輝きに、トラックを大切にする尾本さんの心が表れている。
「暇があれば磨いていますから。もうほとんどマニアですよ(笑)。子どもの絵があることで愛着が増し、トラックをこれまで以上に大切にするようになりましたね」。
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