Bplatz press

独自のデザインが生む、新たな価値 商品とストーリーが融合

2025.04.03

創業65年。タテカワ森本は和装小物のメーカーである。着物離れが加速する近年、70~80代でも着物を着る人は少なくなった。少子化の影響で成人式需要の振袖も減っている。祖父の時代からこの商売を始めたという同社の代表 森本氏は「父が社長だった時代が最盛期。その頃から売上げは減少しています。私は入社して30年になりますが、いい時を一度も知りません」と話す。「ただ、だからこそ活路を見出すことに専念してきたとも言えますね」。

そんな同社が取り組んだのが新ブランドの『Ryujin(流神)』。履物を中心にトータルコーディネートを展開していくブランドだ。

特に目を引くのは草履とスニーカーを融合させたような斬新なデザインの履物だ。「草履は特性上、指先に負担がかかります。履き慣れない人には痛いんです」と森本氏。鼻緒に、スニーカーでいうところのシュータンと呼ばれる、足の甲を覆ってしっかりホールドしその負担を軽減するパーツを取り付けたアイデア商品で、大のスニーカー好きという森本氏が考案した。パーツが増えることで色柄を表現する幅が広がり、和服だけでなく洋服やドレスアップにも合う。

2023年にリリースしてから約2年。自社のネット販売やSNS発信からスタートし、百貨店のポップアップイベントや各種展示会を通じて知名度が上がっているが、発売当初は苦労もあったという。まず、業界の長年の慣習も影響し、会社としてBtoC向けの販売ルートが確立されていなかったこと、もうひとつはデザイン性。華やかだが斬新なデザインに「こんなん誰が履くの?」と言われるほど、顧客への認知と説得にも大変苦労したこともあったとか。これらの壁をどのように切り崩してきたのか。

森本氏は「着物離れや少子化の傾向が強く、伝統的な和装製品が思うように売れないため、自社の強みを活かし『他にはない草履をつくろう』と始めたブランドです。実物を見て良さをわかってもらうしかない」とコツコツと取り組みを続けたという。その結果、デザインや機能性を認めた卸売りや小売店からも注文が入るようになり、その結果BtoBへの取引も拡大している。

今後、『Ryujin(流神)』はどのように展開していくのだろうか。「国内だけでなく海外の方にも発信できれば」と森本氏。自社で手掛けたアニメーションがブランドコンセプトやアイコンとなっている。アニメーションの世界観と草履が融合した独自のデザインによって、商品とストーリーが一体化したブランドだ。「日本の文化は海外からの評価も高いですし、いつかニューヨークで個展を開きたいですね」。伝統を守るためには大切なことはなにかという問いに、森本氏は迷わず「挑戦しながら攻め続けること」と答えた。

代表 森本 桂一郎氏

(取材・文/荒木さと子 写真/福永浩二)

タテカワ森本

代表

森本 桂一郎氏

https://www.tatekawa-wasou.jp

事業内容/和装・履物・バッグ・諸材料一式の製造・販売