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ITの裏側まで理解した配信サービスで映像技術の民主化をめざす

2025.03.13

2020年からのコロナ禍は、多くのイベントがオンラインへ移行する契機となり、ライブ配信サービスの拡大を促した。参入する事業者も増え、既にレッドオーシャン化しつつあった2022年3月にこの分野で創業したのがレザネイの渕上氏。映像を専門に学んだ経歴はなく、大人になってから趣味で制作していた程度。かつリソースの少ない個人事業という形での参入で一見無謀にも思えるが、レザネイは「映像+IT+マーケティング」という独自の強みで他社と一線を画す。まさに“弱者の戦法”のお手本のような事業だ。

創業前は大手ITセキュリティ会社に勤めていた渕上氏。テクニカルセールスエンジニアとして営業提案力とITの専門知識を磨いてきた。もともと独立志向が強く「いつかは起業」という考えがあったという。一方、プライベートでは子どもの写真や動画を編集して映像作品に仕上げ、家族を喜ばせていた。そんな中、勤務先の会社が上場。管理が強化され、仕事に息苦しさを感じた渕上氏は独立を決意する。

「当時、映像クリエイターを養成するコミュニティに入っていて、そこには有名なテレビ番組を作っていた人もいました。その人の作品を見たときに『映像のクオリティでは勝てない』と痛感したのですが、『仕事を獲得する上で本当に重要なのはマーケティング』という考えもあったので、自分独自の強みを作ることに意識を向けました」。

そう語る渕上氏の強みは大きく2つ。ひとつはITの専門知識だ。撮影した動画をオンラインで配信する作業自体は、今やそれほど難しくない。しかし、配信に欠かせないネットワークの裏側まで理解したサポートを提供できる業者は少ない。「映像制作者の中にはIPアドレスなどの細かい設定を知らない人も多いので、私がコマンドを立ち上げてサッと設定すると『すごい!』と驚かれることも。また、ネット環境が整っていない現場では、複数の携帯電話回線を束ねてネットワークを構築したり、衛星通信を利用したりすることもあります。そういう小回りが利くことが強みになっています」。

もうひとつの強みが「マーケティング」に基づく提案力。ライブ配信をマーケティングツールと位置づけ、クライアントがめざすゴールから逆算した最適な配信方式、頻度、内容などを提案する。「生成AIの登場以来、映像の『真正性』が非常に重視されるようになりましたが、ライブ配信は間違いなく真正です。視聴者とリアルタイムでコミュニケーションが取れる点や、潜在顧客にアプローチできる点など、ライブ配信ならではのマーケティング提案が今後ますます重要になっていくと思います」。

「映像のクオリティでは勝てない」という弱みを逆手に取り、独自のポジションで勝負する渕上氏。仕事を受けるたび、その評判が新たな顧客を生み、来たる大阪・関西万博会場での撮影、配信にも関わる予定だ。その一方で、映像業界は大きな変革期を迎えている。動画撮影と配信の裾野は広がり続け、パーソナライズ化の一途をたどる。技術面では放送のIP化が進み、ベースバンド信号による従来の伝送システムからの切り替えが迫られている。これらの変革が進めば進むほど、ITのバックグラウンドを持つ渕上氏の強みは生きる。「これからは企業だけでなく“個人”のビジョンが重要な時代。私は『動画配信技術の民主化』というミッションを通じて『個の力を引き出す』というビジョンの実現を掲げています。個人の強みやストーリーをきちんと発信していかないとAIに淘汰される世の中になるでしょう。逆にそれらを生かすことができれば、個人でも戦っていける。レザネイの事業を通じて、そんな姿を見せていきたいですね」。

代表 渕上 寛氏

(取材・文/福希楽喜)

レザネイ

代表

渕上 寛氏

https://resonate-japan.com

事業内容/動画制作・ライブ配信、WEBマーケティング