RPA導入をDX推進のきっかけに
人の採用がままならず、働き方改革も迫られるなか、より少ない人数で生産性を高める手段の一つとして中小企業の間で関心が高まっているのがRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション:ロボットによる業務自動化)だ。
副社長®はこのRPAの導入支援を主業務の一つに位置付けている。
そう聞くと、エンジニアをズラリそろえた技術系の企業と思いがちだが、「うちはまったくの文系集団」と髙室氏は言う。
不動産、生命保険会社で営業ひと筋に歩んできた髙室氏。その間に培った経営者の人脈を生かし、経営者同士をつなぐマッチングサービスで7年前に独立した。
その後、条件の良いオフィス探しに苦労した経験から、理想とするオフィス環境を提供したいとの思いでシェアオフィスの企画・運営事業にも進出。管理業務の中でも手間のかかる家賃、会議室やコピーサービス利用料などの請求業務をどうにか効率化できないかと考え、導入を試みたのがRPAだった。
「効果が出せるようになるまでに多くの失敗を繰り返した。同じムダをしてほしくないとの思いから導入支援サービスを始めた」と髙室氏。
定型業務を自動化するRPAだが、そのためには使われる数字や文字がデータ化されていることが必須条件だ。だが、いざ支援に入るとそもそも紙に手書き入力の業務が残っているケースがあり、導入が難しい企業が多いことに気づいた。
そこで、RPA導入以前にアナログ業務をデジタル化する作業も合わせてサポートする事業の準備を進めていくことにした。
その矢先、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、BCP(事業継続化計画)への対応を急ぐ企業から問い合わせが相次ぎ、急きょ前倒しで「DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進サポート」を4月から本格的に事業化。
RPA含めて引き合いは前年比で3倍に増えているという。
サポートは、まず社内でプロジェクトチームを作り、業務のどこに課題があるかを洗い出し、優先順位をつけてどの業務からデジタル化し、RPAの活用を進め、どのようなRPAソフトが適しているかを考えたうえで導入を進めていく。
「社内の人員だけで進めようとすると、変化する事に対して面倒だと感じられたり、自分の仕事がなくなるのではないかと不安に思う社員の方が反発して軋轢が生じることがある。我々第三者がデジタル化を推進することが会社と社員の皆さま双方の利益につながり、新しいことに挑戦できるメリットを客観的に説明することで前に進めることができる」と役割を説く。
髙室氏は「RPAを導入することは人材教育そのものだ」と言う。
「すべてをデジタル化する発想を持っておかないとこれからの時代は生き残れない。その意識をすべての社員がどれだけ持てるかでビジネスチャンスが広がってくる」。
RPAの伝道師として思いは尽きない。
(取材・文/山口裕史)