ないなら自分で作る、プロテインアイス市場を開拓
市販の高級カップアイスと比べてプロテインは3倍ながら、カロリーは3分の1、脂質は4分の1に抑えた。「低脂質でもコクがある。味にも自信があります」と1年半で商品化にこぎつけたブラック氏は「罪悪感なく食べられる」アイスクリームの出来に胸を張る。
「4か月で20キロ太ったことがある」という太りやすい体質のブラック氏がダイエットに目覚めたのは来日する直前、スウェーデンにいた頃のこと。プロテインを中心とした食事に切り替え、ジム通いを始めた。日本語を勉強するため22歳で来日した時は、スウェーデンに比べ健康を意識した食品が日本で少ないことに驚いたという。日本語学校に通いながら、プロテインシェーカーを、独自ブランドで発売して月10万円ほどの収入を稼ぎ、事業の才覚を見せた。
5年ほど前、帰国時にスーパーで3種類のプロテインアイスクリームが販売されているのを見た。甘いもの好きのブラック氏。いずれ日本でも発売されるだろうと待っていたがいっこうにその気配がない。それならば、と国内の工場に委託製造してもらい自分で販売しようと考えたが、だれでも食べられるように価格を抑えたいとの思いが強く「自分で製造するしかない」と腹をくくった。
アイスクリームの成分さえ知らないところからのスタートだったが、そこは持ち前の行動力でカバー。インターネットでイタリアのジェラート職人を探り当て、オンライン会議をしてレシピを考えてもらい、家庭用アイスクリーム製造機で毎日のようにレシピの配合を試しながら、友人に試食してもらいアドバイスをもらった。日本人が国産、天然由来の原材料を好むことをふまえ、北海道産てんさい糖や食物繊維の天然イヌリンなどを使い低カロリー、低脂質化を突き詰めた。
昨年11月の展示会で2,000食分を用意し、実食してもらったところバイヤーの目に留まり、今春から大手スーパーのネット販売、大阪市内のスーパー7店舗で希望小売価格298円(税込)で販売している。「糖質制限、脂質制限をしたい人だけでなく、子どもに甘いものをあまり食べさせたくない保護者、そしてタンパク質の摂取が足りていないけれど固い食事は食べられないという高齢者までターゲットは幅広い」とブラック氏。「多くの人の協力でここまで来ることができた。ヒット商品に育てることで恩返しをしたい」と語り、ブランド力の向上を果たした先に他のスイーツ商品の開発も視野に入れている。
(取材・文/山口裕史)