「起業」のハードルは自分次第！「失敗してもやり直せる」と自分を励まし挑戦すること
大阪産業創造館 創業支援チームの【起業プログラム】を実際に利用し起業した“先輩起業家”を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談を紹介します。
「起業」のハードルは自分次第！
「失敗してもやり直せる」と自分を励まし挑戦すること
幼いときから「マグロ」が大好物の奈須さんは、高校生だった当時に観たテレビ番組で、『近い将来、マグロの水揚げ量が減るかもしれない』ということを知り、いつか漁業に携わる仕事がしたいとぼんやり考えていた。
大学進学時には、安定した道へ進もうと考えていたが、マグロへの思いが捨てきれず、水産の道へ進むことを決めた。大学では「マグロの養殖術」を学び、卒業後は本格的に養殖業に従事し、ついにマグロ養殖のプロジェクトに参加することになった。
しかし、順調に夢を叶えつつあった矢先に世間はコロナ禍に見舞われ、プロジェクトはストップした。この状況がいつ終わるのか、先が見えないなか、「もう、自分でやるしかない」と独立を決めた。
不安がなかったといえば嘘になる。起業を考えたタイミングで結婚し、新しい家族にも恵まれ、責任も生まれたからだ。結果そのことが背中を押してくれたという。
まずは、貯金を元手に、家族の協力を得ながら水産養殖業の会社をつくった。養殖施設の立地として、売り先へ輸送するのに便利で、かつ質の良い海水を確保できる場所である岬町を選んだ。
設備工事を早々に着工し、設備投資のための資金調達を進めた。漁業関連の企業が資金調達にの際にサポートを受けることができる「漁業信用保証保険制度」を利用する計画だったが、水産養殖業は対象外のため保証人として立てることができず、スムーズには進まなかった。
まさかのできごとに奈須さんは、頭を抱えつつも「とにかく前へ！」と諦めず、融資を受けるために必要な事業計画書も綿密に整え、融資を受けることができた。
事業開始後は、売り先が増えれば養殖の魚種も少しずつ増やすという具合に、規模に応じて施設を徐々に拡大していった。
それに伴い、水槽の交換も随時必要となるが、従来のFRP水槽とは違いリサイクルが可能な「ポリプロピレン」を使用することで、SDGsへの貢献と設備投資の節約にもつながった。
人材の確保もすすめた。一人では一日一歩しか進めなかったことが、メンバーがいることで一日二歩進むことができ、肩の力も抜け周りを見る余裕も出てきた。
株式会社陸水として事業は軌道に乗ったころ、岬町主催のビジネスプランコンテストで、岬町を代表する水産名物の創出を図るビジネスプランとして認められ、最優秀賞に選ばれた。
このことをきっかけに岬町からのバックアップを受け、将来の大阪経済を担う有望な起業家を発掘し、その成長を支援する、大阪産業局の「大阪起業家グローイングアップ」事業のビジネスプランコンテストに挑戦することとなった。起業二年目のことだった。
応募に必要な資料作成は大変だったが、出場することによる知名度のアップや、入賞した際の補助金、ハンズオン支援やマッチングプレゼンの機会など、事業拡大につながる大きなメリットと考え全力で取り組んだ。
出場が決まったとき感じたのは、周りの期待値の大きさと人前でプレゼンをすることへのプレッシャーだった。
そうしたプレッシャーを乗り越え挑んだ ビジネスプランコンテストでは、大阪産トラフグ・サーモンなどの消費地生産型の陸上養殖の事業が優秀と評価され優勝。補助金やサポートを受け、養殖業だけでなく自社での加工場も構えた今、飼料の自社開発にも着手している。
いつかは陸水産の魚を美味しく食べてもらえる飲食店など、すべてワンストップでサービスを提供できる事業としてステップアップしたいという新たな目標もできた。
『マグロは生まれた瞬間から死ぬまで泳ぎ続ける』というが、マグロに魅せられた強い思いが、奈須さんを突き動かしているのかもしれない。
最後に、『事業を軌道に乗せるために必要なことはなにか？』と質問を投げかけると、「毎日人に会うこと。オンラインでもいい、とにかく人と会って話すこと。人との縁をつないでいくこと」と答えてくれた。
“人”とのつながりは、“人”がつないでくれるということを、奈須さんが大切にしているのだと伝わった。
代表取締役 奈須 悠記氏
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利用したプログラム／大阪起業家グローイングアップ
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