スタッフ連載

“旅”を通じて人々を幸せにするという想いを形にした「株式会社RelyonTrip」の起業ストーリー

2024.02.29

大阪産業創造館 創業支援支援チームの【起業プログラム】を実際に利用し起業した“先輩起業家”を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談を紹介します。

【起業家図鑑】vol.44
“旅”を通じて人々を幸せにするという想いを形にした
「株式会社RelyonTrip」の起業ストーリー

おでかけ・旅行計画アプリ「SASSY」で外へ出ることを楽しんでほしい。
行き先にピンを付けた場所から簡単に行きたい場所を見つけることができ、さらにInstagramやGoogleとも連動し、さまざまな方法で検索できる。友人との行き先共有もでき、デジタルしおり機能で複数人での旅先のルートを編集することができる。幸せを感じてほしいことと、スマホに触れるよりも外へ出かけて景色を見て本物の風景を楽しんでほしい。
西村氏が願う「誰かの幸せ」のために努力する思いにクローズアップする。

▼ 起業のきっかけ
祖父から続く事業を継承した父をはじめ、親戚も経営者という一家で育ち、幼いころから「いつか自分も起業したい」という気持ちを持っていた。
大学進学後、ビジネスを学ぶうちに起業を身近に感じたが、当時は学生起業家というのは一般的ではなく、また自分の資金で事業を起こしたいと思っていたこともあり、自己資金を貯めることと、社会経験を積むため大手保険会社への就職を決めた。
仕事も楽しくやりがいにあふれ、フィールドとしても最高の環境だったこともあり、気がつけば入社から11年経っていたが、その間も、アイデアノートを付けるなど、「起業」が頭から離れたことはなかった。

そんなある日、「このままでは後悔するかもしれない」という強い不安にかられた時期があり、何か行動しなければと思いつつも、当時は役職を任される立場にあったため、思い切って起業するには勇気がいった。しかし、「自分で何かをはじめたい」という思いを諦めきれず、アイデアから生まれた「SASSY」というプロジェクトを、土日を活用した“ながら起業”で始めることとなった。

▼ 事業アイデアはどこから?
事業アイデアは、いろいろと浮かんでいたが、キーワードになるものを探していたときに、西村氏や家族が大の旅行好きだったことや、叔父が旅行の集客サイトや比較サイトを運営していたこともあり、「旅行」に関連した事業が思い浮かんだ。

西村氏の旅行のスタイルは、Googleマップにピンをさしながらロールプレイング的な旅ルートを進めていくタイプだ。例えば今いる場所から少し離れた場所に、地域人気一位のお好み焼き店があったとしても、現在地近くにお好み焼き店があればそこへ行くという効率的な旅行をしてきた。旅先で効率よく観光できるルートをモデルコース化することができれば、日本各地の未踏の地への旅も身近に楽しめると考え、「冊子」「心にささる」「地図にピンをさす」というコンセプトに基づいたネーミングの「SASSY」は生まれた。

また、「SASSY」のウェブサイトは、ロールプレイングゲームをイメージしている。
一時期ブームとなった、スマートフォンのGPS機能を使ってプレイヤーが現実世界を歩き回り、実際の場所を訪れアイテムを入手するモバイルゲームが、外出を避ける人たちを家から連れ出したように、多くの人が非日常を楽しむために出かけるきっかけを提供したいという思いを込めているという。

▼ 起業プログラム利用のきっかけと活用は
「自分のアイデアの実力を試してみたかったんです」と西村氏は言う。そこで目に留まったのが、「大阪起業家グローイングアップ」事業だった。ビジネスプランコンテストを通じて補助金やビジネスプランから成長までハンズオンで支援してくれることを知り、事業成長のチャンスを掴めると思い、挑戦した。このビジコンへの参加で、点と点が線となり、つながりが広がっていくことを深く実感した。

というのも、起業後の最初の3期間は売上げがほとんど伸びなかったのだが、4期目に初めて売上げが上昇した。そのきっかけは、「グローイングアップ」事業の審査員が、所属していたコミュニティと観光バスの事業者を紹介してくれたことだった。このつながりから、観光バス事業のIT化を推進する方針と「SASSY」のビジネスアイデアが合致したことで、マッチングが実現した。
こうして、ビジネスが成長し、新しい事業展開が生まれ、たくさんの企業・自治体・大学との取り組みが次々と実施できたことで、初めての黒字を確保することができた。

▼ 創業後の苦労と課題
勤めていた企業では人事にも携わり、リスクマネジメントのエキスパートとして活躍してきた西村氏。リスクは企業も潰してしまう可能性があるため、慎重に対処する必要があることをよく理解していた。アプリサービスの提供は、レビュー評価によって品質が問われ、利用者の増減に大きく影響する。そのため、アプリ操作にトラブルが発生した際には、迅速な初動対応が肝心となる。不満のあるレビューにも真摯に向き合い、対応についてチーム内でも迅速に共有し、顧客の本質的なニーズを理解することを重視し改善につとめてきた。全メンバーがリスクに対して無関心にならないよう、チームの連携を重視するように努めている。

▼未来の起業家へのメッセージ
「これからアプリ開発をしたい」と相談を受けることがあるが、まず「なぜアプリが必要なのか?」と問いかけています。実際にはアプリが必要な理由はそれほど多くなくて、アプリには利点はあるけれども、Webでターゲットを確実に捉えた後でもアプリ開発は十分間に合うんです。
また、アプリは手段に過ぎず、Webサイトで足りる場合もあり、制作コストも1/10程度で済みます。アプリ開発には数千万円のコストがかかりますが、起業当時の自分はそのことをわからないまま進めていました。
でも、案外なるようになるんですよね。自分の理念として「成るように成る」といつも思っていて、失敗も成功の元としてポジティブに捉えることが大事だと思っています。

最後に、地図を初めてつくった『伊能忠敬』のように、世の中にないものを初めてつくり、世界中の人々に喜ばれた人に憧れているという西村氏。
「SASSY」を、もっと効率よく楽しんでもらえるツールになるよう、足を使ったフィールドワークなどで情報を収集するなど、泥臭い努力も惜しまない。
「旅行」という領域でこのサービスを使ってもらい、価値観や世界が広がって、幸せになっていく、その結果、「このサービスがあってよかった」と思ってもらえる世界をつくりたい。
未来へ希望をもつ人が増えるように、これからも頑張ってきたいと語ってくれた。

西村 彰仁氏

アイデアだけでもいい、まずは誰かにそのアイデアについて話してみませんか?
大阪産業創造館では、起業に役立つセミナーやプログラムをご用意しています。

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⇒利用した起業プログラム
「大阪起業家グローイングアップ」事業
大阪では、経済・社会の新陳代謝を促し、大阪経済の持続的な成長を実現するため、将来の大阪経済を担う有望な起業家を発掘し、その成長を着実に支援する「大阪起業家グローイングアップ」事業を実施しています。
https://allosakakigyo.jp/

株式会社RelyonTrip(リリオントリップ)

代表取締役CEO

西村 彰仁氏

https://relyontrip.com

事業内容/飲食・観光スポット計画アプリ『SASSY』の開発・運営