事業承継

《講演録》「タニタ社員食堂」誕生のワケに迫る、世代交代のビジネスチャンス

2019.04.18

《講演録》2019年3月8日(金) 開催
【世代交代フォーラム】経営のバトンを繋ぐアトツギが新領域を開拓するには
特別講演「タニタ社員食堂」誕生のワケに迫る、世代交代のビジネスチャンス


株式会社タニタ 前代表取締役社長 谷田 大輔氏

株式会社タニタを赤字状態で父親から引継ぎ『タニタの社員食堂』など新しい取り組みを推進し、再生させた谷田大輔氏。継ぐ立場、継がせる立場のどちらとも向き合った谷田氏だからこそ語れる世代交代についてお話いただいた。

 
>>> 世界中の会社で「世代交代」は一つの大きなテーマ

世代交代は、すべての会社で必ず起こること。タニタだけが特別というわけではありません。世の中にはたくさんの組織があって、世代交代は1つの課題として世界中で取り組まれています。私の体験を通して、少しでもお役に立てることがあればと思って、お話させていただきます。

 
>>> 「譲る方は覚悟を、譲られる方は腹を据えよ」というアドバイス

経済産業省の発表によると、今後10年の間に経営者が70歳を超える中小企業のうち127万社が後継者未定で廃業予備軍となっているそうで、大きな課題となっています。世の中を見渡してみると、事業承継は社会的問題を抱えていると感じます。それぞれの会社ごとに条件は違うので、ご自分の会社を自分なりに役員含め早く検討して発展するような過程を踏んでいってほしいと思います。

後継者がいても引き継ぐ側にも課題があります。私が会社を引き継ぐとき、父に連れられて2人のコンサルタントと話をしました。そのときのコンサルタントの言葉が記憶に残っています。

コンサルタントは父に「この会社はあなたの作った会社ですか」と質問しました。父が「はい」と答えると、「それではあなたの目の黒いうちに潰しましょう」と言ったのです。赤字状態であったこともあり、会社が潰れるかもしれないということを、「譲る方は覚悟しろ」「譲られる方も腹を据えよ」ということだったんだと今になったら思いますが、当時は私にとって印象的でした。

また、もう1人のコンサルタントには、自分は営業しかやってこなかったので、製造も兼ねた会社であるタニタで、私がどうやって会社全体をマネージメントしていけばいいのかアドバイスを求めました。それに対してコンサルタントの返答は、「お客様の時代です。お客様に合わせて考えられるのがいいのではないですか」というものでした。

実は当時のタニタは、売上が60億円に満たない会社で、借金が35億円もあったんです。私は家族を集めて、「潰れる可能性がかなり高い。だけどやるだけのことはやる。いろいろ迷惑はかけるかもしれないけれど、役員さんに責任をなすりつけるようなことだけはやめよう。最後の決断は私がする。倒産した時の責任は全て私の責任だ」と自分の覚悟を伝えました。ですから、会社を継がれる方もそういった覚悟をもって継いでほしいと思います。

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株式会社タニタ

前代表取締役社長

谷田 大輔氏

http://www.tanita.co.jp

事業内容/家庭用・業務用計量器などの製造・販売