産創館トピックス/講演録

≪講演録≫ネコを駅長にした立役者 ~社会に貢献し、人を幸せにする経営理念「忠恕」~

2015.02.02

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≪講演録≫2014年10月16日(木) 開催
【社長トークライブ】ネコを駅長にした立役者 ~社会に貢献し、人を幸せにする経営理念「忠恕」~
両備グループ 代表 兼 CEO 小嶋光信氏

「リストラする前に自分のクビを切れ」

私ども両備グループは日本三大奇祭の一つと言われている「西大寺会陽(さいだいじえよう)」で有名な西大寺観音院から日本三名園の岡山後楽園までの区間を走っていた西大寺鐵道という鉄道会社から始まり、今日では運輸・観光関連、情報関連、生活関連等の計58社、年商約1300億円、経常利益約56億円、社員総数約8500人の企業グループです。阪急、阪神、近鉄といった他の私鉄グループ各社と違う特徴は、両備システムズを中心とした情報関連部門の割合が大きいことです。

私どもの経営理念は、「忠恕(ちゅうじょ)=真心からの思いやり」で、行動規範は「知行合一(ちこうごういつ)」と「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」の2つです。

1910年の創業で、2010年に100周年を迎えました。なんとか次の100年を乗り切っていく為に皆をまとめる経営理念はないだろうか毎晩考えていたところ、ぱっと頭に浮かんだのがこの「忠恕=真心からの思いやり」でした。

私どもの企業には、トップから次のトップへと代々引き継いできた教訓があり、それが「社員をリストラする前に自分のクビを切れ」です。景気が悪いからといって安易にリストラする前に、まず自分のクビを切って、社員に詫びてから人員整理をしなさいということです。

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私どもの一番の危機は昭和37年に起きました。当時の国鉄・赤穂線が西大寺鐵道とまったく並行の路線に敷設されたのです。相手は国営の普通鉄道。こちらは軽便。スピード、快適さ、あらゆる面でかないません。今までご利用くださったお客様に迷惑とならないよう、赤穂線の完成後、大部分のお客様が国鉄に移ったのを見計らって廃業しました。普通は廃業したら社員はみんなクビですが、当時の社長・松田基は、一人も辞めさせず出社させて毎日顔を見ながら考えました。

そして、社員一人ひとりの得意分野を考えて仕事を作っていったのです。トップの仕事というのは景気の悪いときに社員の仕事を作ることです。両備グループの社員数が40人から8500人にまで増えたのは、社員をクビにできなかったからです。景気が悪くなればなるほど色んな事業を作ってかなきゃならない。経営学からいうと人が余っているならば切れというのが常套ですが、私どもは切ってはいけない。そのことが逆に私どもの経営を守ったのです。

両備グループでは昭和40年代からCEO(経営責任者)とCOO(執行責任者)が分かれています。これを信託経営と呼んでいます。経営責任者は執行責任者に経営を信託する。信託経営にはもう一つの意味があって、企業というものは社会から信託を受けてお預かりしている公器であるから善良に管理してしっかりした会社を作らなくてはならないというものです。

私どもは管理部門を経営サポートカンパニーと呼んでいます。各執行部門が社員、土地建物、設備、車両等を借りて経営する。人が余ったときはリストラしちゃ困りますから全部返してもらう。設備もです。とにかく執行部門は前に向かってだけ仕事をして、後ろ向きの仕事は管理部門が全部一手に引き受けます。これが経営サポートカンパニーです。

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両備グループ

代表 兼 CEO

小嶋 光信氏