産創館トピックス/講演録

≪講演録≫ネコを駅長にした立役者 ~社会に貢献し、人を幸せにする経営理念「忠恕」~

2015.02.02

地域が栄えて初めて地域公共交通になる

日本は2002年に規制緩和という大きな失策をして全国で数十社に及ぶ鉄道会社、バス会社が瞬く間に倒れました。地域公共交通の業界にものすごい嵐が吹いたんです。法律を変えたんですから当然ですね。

私は“たまちゃん”と楽しく遊んでいるように見えますが、顔は笑って心は泣いているんです。法律を変えない限り仲間の会社が助からない。これから先、約半分は潰れるだろうと。法律を変えるというのは実に大変なんです。東京の政治家さんたちは東京が日本だと勘違いされている。いくら言ったってなかなか聞いてくださらない。そこで私どもの戦いが始まったんです。

kouenroku_ryobi_05_300

今までのやり方では、公共交通はもう成り立たない。マイカー社会の到来で50%~60%がマイカーに移ってしまって売上げは半分です。なんとバスは全国で90%が赤字の事業となり、鉄道は75%が赤字。地域公共交通は赤字の事業というビジネスモデルになっているんです。考えられることは全てやりました。

しかし、公共交通を活性化しようと思ってもできませんでした。ということは、公共交通の活性化はあまり効果がない。公共交通は地域が元気になってこそ元気になる。地域公共交通は町づくり、地域づくり=地域活性化の縁の下の力持ちのようなものなんです。そこをしっかりやることによって地域が栄えていく。地域が栄えて初めて地域公共交通なんです。

では、ヨーロッパでなぜ公共交通がしっかり残っているのかを調べたら、公設公営なんですね。アメリカから自動車会社が入ってきたときヨーロッパの人はじーっとアメリカのことを見ていました。ヨーロッパの人は、マイカー主流の社会となったら、子どもたちや車の運転が出来ない人たち、いわゆる交通弱者はどうするんだと考え、公設公営で全ての公共交通を残したんです。

後年、サービスが悪いとかコストが高いということで公設民営という形になって今日に至っていますが、社会の道具として残している。日本は儲からなかったら潰れてしまえというのですが、潰れたら大変なことになるんです。そこでなんとか「公設民営」をというキャンペーンを張っていたのですが全く相手にされませんでした。

「ヨーロッパ型の公設民営を」と考えていたときに、公共交通ではなく三重県から中部国際空港セントレアへ海上アクセスできる航路を作りたいという話がありました。私どもが分析したところ、津の1航路だけ公設民営にすればできそうだと分かりました。

kouenroku_ryobi_06_450

それを聞いた北川正恭知事(当時)が作ろうと言い、市民に問うたところ、90%以上が「欲しい」との回答で作りました。これが津エアポートラインで大成功しました。そうすると今度は松阪市もやると言って作りましたが、2~3年で潰れました。港も作って40~50億投資しているのに倒れてしまうとなり、なんとか残して欲しいということで私どもが津エアポートラインの松坂航路としてお引き受けしました。そんな形で公設民営の有効性を実証できたのです。

次ページ >>> たまちゃんとの出会い

両備グループ

代表 兼 CEO

小嶋 光信氏