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コンクリート含浸材で全国トップクラス 抜群の浸透力で劣化を予防

2014.08.08

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高度成長期に建設された道路や橋梁、トンネルなどコンクリート構造物の老朽化が進んでおり、限られた財源の中でこうした社会資本をどのように安全に長持ちさせるかが国、地方自治体にとって大きなテーマとなっている。この要請に応えるコンクリート含浸材として全国でトップクラスの実績をあげているのが大同塗料の「アクアシール」だ。

コンクリートを劣化させる要因は、アルカリ骨材反応、鉄筋腐食、凍結などで、そのすべての反応過程で水が作用している。「水をコンクリートに浸透させないようにすれば劣化を最小限にできる」と泉川氏は含浸材に求められるポイントを説く。

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アクアシールをコンクリート表面に塗ると、水をはじく性質を持つ「シラン」がコンクリート内部に浸透し、吸水防止層を形成する。ただ、シランは水のようにサラッとしており、そのままでは塗布してもすぐに流れ落ちてしまう。

そこでシランに粘性を持たせる物質を加え、ジェル状にして表面にとどまるようにした。含浸材に含まれるシランの成分比率は90%以上。この高い比率のまま粘性を持たせられる点が同社の強みだ。これにより1回塗布するだけで表面から6、7ミリのところまで含浸材が浸透し、シランをコンクリート内にとどめることで高い効果を発揮させる。

コンクリート表面保護工法は、表面に何層もの膜を重ねる表面被覆工法が主流だが、この工法は1日かけて乾いては塗りを繰り返す必要がある。これに対しアクアシールは、1回の塗布で済むため、「塗装工事も含めたトータルのコストを表面被覆工法に比べ3分の1に抑えられる点も採用が進んでいる大きな決め手になっている」という。

同社はもともと、一般的な塗装用ペンキでスタートしたが、昭和40年代以降、特殊用途向けの合成樹脂塗料の開発に経営資源を注ぐようになった。中でも、防水性に優れ、塩素に強い耐薬品性を持たせたプール専用塗料では80%という高いシェアを持つ。

現在、全社員の約1割に当たる24人が技術社員で、研究開発から開発した製品の現場立会いまでを行う。「塗られた現場の状況を確認すれば次の研究テーマが生まれる」と泉川氏。

2年前からは、営業と技術の若手社員が集まって、研究テーマを自由に出し合う場も設けている。ちょっとしたことから夢のあるものまで、新しいアイデアが生まれたら「まずはやってみる」のが同社の開発方針。すぐに商品が完成しなくても何らかの成果につながる前進だ。これからも特殊塗料の分野で独自路線を貫く。

▲コンクリート表面に塗布すると、吸水防止層を形成し劣化要因となる水の浸入を妨げる。

▲コンクリート構造物の予防保全のために使われるアクアシール。

(取材・文/山口裕史)

大同塗料株式会社

技術部 部長  

泉川 次郎氏

http://www.daido-toryo.co.jp/

1937年設立。当初は一般塗料製造でスタート。現在は汎用の錆止め用塗料と屋根材、床材、プール用の特殊塗料を手がける。プール用塗料ではシェア80%を占める。