ものづくり

《講演録》キーエンスに学ぶ “高収益体質” 経営のメソッド [2]

2019.06.18

《講演録》2019年3月25日(月) 開催
【ナレッジセミナー】キーエンスに学ぶ “高収益体質” 経営のメソッド

田尻 望氏
株式会社カクシン 代表取締役
一般社団法人Key to Innovation 理事

55.6%という驚異の利益率を誇る会社、キーエンス。平均年収2,000万円以上という異例の高待遇につながる高収益体制を生み出す秘密とは?
キーエンスに4年半勤務後独立、その後、独立直後に事業の失敗を経験し、外食系オーナー企業で1から事業立上を経験し、現在経営コンサルタントとして活躍する田尻望氏が、高収益化のキーとなるポイントを3回に分けて解き明かします。

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《講演録》キーエンスに学ぶ “高収益体質” 経営のメソッド [1]

 
>>> 真のニーズをつかめ!コンサルティングセールスで売上げアップ

続いてセールスについて取り上げますが、その前にセールスや商品企画のベースとなる付加価値について、お話させてください。

付加価値はお客様のニーズを越えた先にあると思われがちですが、その部分は“無駄”だと判断できるところが他社との大きな違いです。

わかりやすい例で言えば、ほとんど使われないのに開発・搭載されているスマホの初期アプリ。これを使っている人を私はみたことがなく、セミナーでも聞きますが手があがったことがありません。

これにかかる開発、設計、マーケティング、営業などあらゆるコストは、全て無駄です。なぜなら“使われない”から。そしてこのコストは全て原価に乗るため、結果的に利益を落とすことになります。

それでは、キーエンスが考えているであろう付加価値とは何か。それは“ニーズの解決“です。

お客様がすでに気付いている顕在ニーズとは別に、お客様が気付いていない、気付いているけれど言語化されていない深いニーズを把握して、そのニーズの解決策として、製品を開発し、提供することなのです。

当たり前のように聴こえるかもしれないのですが、この“ニーズ”の源泉が、“顧客から発せられるもの”か“開発側のエゴ”かが他社と違うところだと感じています。

 
そして、この考え方を実現可能にするコンサルティングセールスについて、お話しさせてください。

コンサルティングセールスでは、目的を、お客様が最適な意思決定ができるように情報提供をすることとしています。そのため、単なる押し売りではなく、相手のニーズを聴くこと、そしてどのようにすればそのニーズを叶えられるか?ということにフォーカスされています。そのためのセールスの面談は4つのプロセスに分けられ、それぞれにスキルアップが求められます。

例えば、面談の中での2つ目ステップには、「徹底的な調査」があります。この徹底的な調査の目的は、“ニーズを明確に、完全に、認識のずれなく理解すること”です。

この言葉の通りなのですが、私自身この言葉があったおかげで、“ニーズの探求に終わりはない。わかったと思った瞬間にニ流になる”と考えることができています。

この徹底的な調査においては、具体的に何?なぜ重要なのか?、ニーズを生んだお客様の状況はどんなものか?などのポイントに分けられ、体系的にヒアリングするのです。

例えば、タブレット販売の営業会社があったとして、お客様から「便利なものがいい」「使い勝手のよい機種にしたい」というあいまいなニーズが提示されたとします。これだけの情報なら提案するのはiPadでもよいかもしれません。

しかし、上記のポイントを聞いた結果、「高性能だと色々なアプリがあり迷ったり、遊んだりしてしまう」「年配の社員も多く画面が見づらいと使いたくないと言っている」という裏のニーズをいくつもつかめれば、提案するべき商品は何か?というのが見えてくるのです。

この場合の提案は、もしかすると簡単タブレット――必要なソフトだけ初期設定で入れられて、画面の文字が大きく年配の方でも見やすい――かもしれません。

次ページ >>> 自社商品の“特徴”と“利点”を分けること

株式会社カクシン

代表取締役

田尻 望氏

https://www.srv-lab.co.jp