「ひとりが複数の場で活躍できる社会」めざし、自らパラレルキャリアを実践
経営者と芸人。三島氏には2つの顔がある。「パラレルキャリアが大切だと考えています。起業時のセーフティネットとしても、定年後を考えても」。
2013年に立ち上げたactuarise(アクチュアライズ)は、ソフトウェアの開発・販売を専門にする会社だ。
これまでに業務の効率化を図るタスク管理アプリ「チームToDo」や、Webサイトの画面を自動で画像変換するシステム「Webcliple(ウェブクリップる)」を生み出してきた。
2018年からは開発したソフトを用いて、働き方のコンサルティングも手がけている。
出身は大手電機メーカー。新卒で入社して15年、自治体をターゲットにITシステムの営業を担当してきた。当時、顧客だった市からの要望に対する解決策を温め続け、形になったのが現在の「Webcliple」だ。
次に勤めていたベンチャー企業では、プレイングマネージャーとして部下の業務管理に悩まされた。その経験が、メンバーそれぞれのタスクや進捗を見える化し、残業を減らす「チームToDo」の開発につながった。
サラリーマン時代に発案したシステムが今も使われ続けるのを見て、「独立して勝負したい」と思うように。数多くのセミナーに参加し、中小企業診断士や弁理士に個別で相談。特許や創業補助金を取得し、エンジニアを採用してアイデアを具現化できることとなった。
2つ目の顔は、三味線藤本流の師範。2006年から和楽器・和文化の教室を主宰する。専門分野であるITを活用し、連絡や生徒同士の交流はSNS、楽譜はPDF、遠方の生徒とはスカイプや録音したMP3データでやり取り。ホームページで寄席や曲芸、舞踊の出演依頼を受け付け、生徒の演奏発表の場も作り出している。
また、趣味で始めた素人落語家としての顔もある。プロの噺家に指導を受け、「矢目問亭 残業(やめといてい ざんぎょう)」という高座名で残業削減をネタにした創作落語「ブラック企業の白い社長」がレパートリーだ。「『チームToDo』を広めるために使える噺です(笑)」。近々、動画投稿サイトにアップする予定だ。
本業に限定せず、ITと伝統芸能、ビジネスと趣味も結びつける。4人に増えたactuariseのメンバーも、全員兼業でテレワークだ。「誰もが時間や場所に縛られず活動できるように、開発したツール類をバージョンアップしていきたい」。
ひとりが複数の場で活躍する社会をめざし、自ら実践している。
(取材・文/衛藤真奈実)