スタッフ連載

物流のクオリティを上げてみせます!

2018.06.21

%e5%bf%97%e5%b2%90%e3%81%95%e3%82%93%e3%82%a4%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%99%e3%83%bc%e3%82%b9

大阪産業創造館 プランナー 志岐 遼介による連載 【ロジは一日にして成らず】

運送事業者の実に9割が中小企業と言われ、デフレ時代の厳しいコスト要求や原油価格の高騰に伴う経費の上昇など厳しい時代が続く物流業界。大阪産業創造館では、そんな厳しい時代を戦う運送事業者、それに携わる事業者を応援しています。

物流の品質向上、現場のルールづくりなど改善活動に役立つテーマや、輸配送や在庫管理マネジメントなど物流KPIの改善手法などをテーマにした「ロジスティクスセミナー」の最新情報はコチラから

vol.10 株式会社三協 ~物流のクオリティを上げてみせます!~

東大阪市に本社を構え、大阪府内6箇所に物流拠点を持つ株式会社三協。荷主から商品を預かり、荷主の受発注に従って商品を梱包して発送する物流アウトソーシングと呼ばれる事業を主力としている。

Amazon、楽天市場に代表されるように通信販売での流通量が飛躍的に上昇している現在では競争の激しいカテゴリーと言えるが、独自の物流戦略、業務改善で顧客からの信頼は厚い。物流部門のキーマンである浦川物流技術室長に話を伺った。

社名の由来は「“三洋電機の協力会社”を略して、三協です」と大阪の企業ならではのエピソード。会社を創立した当初から主に三洋電機の電子部品の調達物流を手掛けた。数ある電子部品をアッセンブリ単位でピッキングし、それを海外へ向けて発送するという仕事がメインであった。

国内電機メーカーに不況の波が押し寄せたタイミングで、三協にも転換期が訪れる。約20年前からアパレル関連の企業の仕事を取り扱うようになり、10年前からEC物流(イー・コマース物流)に進出する。

多くの物流会社が煩雑で手間のかかる少量多品種、小口発送の取り扱いを敬遠する中で、その筆頭格と言えるEC物流に進出した。「今でこそレッドオーシャンですが、当時はブルーオーシャンといえる市場でした。他社がやりたがらないことを積極的にやることで、市場を拡大できましたし、社長も積極的でした」と浦川氏は振り返る。

8年前に50坪程度の在庫面積だったある顧客が、今では400坪に拡大し出荷量も5倍に増加した。EC物流に目を向けた戦略は誤っていなかったことが数字となって表れている。

物流技術室 室長 浦川優規士氏 物流技術管理士の資格を持つ物流のエキスパートである。

そんな中、EC物流で最大の課題となるのが「誤出荷」と「在庫差異」である。アイテム数の多いECでは、色違いやサイズ違いなどの細かいヒューマンエラーで誤出荷してしまうケースや、誤出荷の訂正遅れや在庫棚への商品置き間違いなどで、システム上の在庫数と実際の在庫に差異が発生するというエラーが多い。

三協はこの問題にいち早く目をつけた。トライアル&エラーを繰り返し、顧客も巻き込みながら、誤出荷と在庫差異を限りなくゼロに近づけるための業務フローと作業手順を構築していく。

特にこだわったのが「入庫時のチェック、検品」だ。一般的な物流倉庫であれば、顧客が送り込んできた商品は数量のチェックのみに終わるが、三協のチェックの目は鋭い。「アパレル製品であれば、製品にシワが寄っていないかなど、品質面までチェックして顧客に報告します。入口に手間をかけることで、出荷後のクレーム対応などの手間を省くことができると考えています」。(浦川氏)

物流の要と言われるWMS(倉庫管理システム)は自社のSEが構築したオリジナルのシステム。大手ベンダーが開発したWMSを導入すると、顧客の受発注システムと互換性がなく、システム改修に大幅な費用が掛かるなどのデメリットが発生するが、三協のWMSは「お客さんが現在使っている受発注システムをそのまま利用してもらえるようになっています」と強みを持つ。

これらの丁寧な業務は「Logi4mation」(ロジフォーメーション)と呼ぶ社内体制で生み出される。営業部門が顧客から丁寧にヒアリングを行い、浦川氏が担当する物流管理部門が業務フローを計画、プランに合わせてシステム部隊がシステムを顧客毎に構築し、現場チームに落とし込むという流れである。新規に契約した顧客については稼働までの業務フローを入念に作り上げる。

段ボールで製作したオリジナルの在庫棚。三協は全てどの棚にどの品目を保管してもいい「フリーロケーション」で在庫管理をしている。

こうして蓄積された実績が三協のノウハウとなる。ピッキング作業は6ヶ所の事務所で共有できているため繁忙期や出荷の状況次第で他拠点へパート社員が応援に行くなど、横断したヘルプが実施されている。ピッキングリストにも工夫を凝らし、現場で必要な情報であるロケーション番号、品番、数量のみを記載したシンプルなものを採用し、誤出荷を限りなくゼロへ近づけていく。

現在ではこれらの三協のノウハウを外部へ提供する物流診断サービスを開始。物流業務での課題点を抽出し、三協へのアウトソーシングを提案するだけでなく、直接物流現場へ出向いて現場で汗を流して改善コンサルを実施することや、三協からリソースを派遣して倉庫運営を代行することもある。

2年前からは物流倉庫見学会を実施。見学会冒頭ではミニセミナーを実施して、在庫削減の考え方を提供している。広報宣伝に力を入れ始めた昨今では月に3~4回開催、1回あたり平均で20名近くが参加するという。

最後に浦川氏に三協の強みを聞いた。「物流の質を上げたいという思いを持つ会社様はぜひ、私たちにアウトソーシングの相談をしてください。EC企業様から“今までで一番梱包が丁寧だった、と商品レビューが入ったよ”とフィードバックしてもらったこともありました。今ではECの商品レビューには梱包や配送といった物流の項目もあります。“良くなった”と言ってもらえるように日々工夫しています」。

物流倉庫らしからぬ、デザイン性を持たせた倉庫レイアウト。図書館で本を探すのと同じ感覚?

(取材・文/大阪産業創造館 ものづくり支援チーム プランナー 志岐 遼介)

株式会社三協

物流技術室 室長

浦川 優規士氏

http://www.kk-sankyo.com

事業内容/物流業務全般、物流コンサルティング、倉庫運営代行など