中小運送業に伴走し続ける心強きパートナー
大阪産業創造館 プランナー 志岐 遼介による新連載 【ロジは一日にして成らず】
運送事業者の実に9割が中小企業と言われ、デフレ時代の厳しいコスト要求や原油価格の高騰に伴う経費の上昇など厳しい時代が続く物流業界。
大阪産業創造館では、そんな厳しい時代を戦う運送事業者を応援しています。
物流の品質向上、現場のルールづくりなど改善活動に役立つテーマや、輸配送や在庫管理マネジメントなど物流KPIの改善手法などをテーマにした「ロジスティクスセミナー」の最新情報はコチラから
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vol.2 オフィスきよみ~中小運送業に伴走し続ける心強きパートナー~
国土交通省では2014年から「トラガール促進プロジェクト」として、運送会社でも女性が活躍できる道しるべとなる取り組みを実施している。
男性社会のイメージが色濃い物流業界の中で、約10年にわたって運送会社をサポートしてきた女性社労士の石原清美さんにお話を伺った。
「私でも大丈夫かな?というのが最初の印象。電話を取るだけって言われたので、それならと」。
学校を卒業した後に勤めていた繊維会社を退職し、次の職場を探していた石原さん。
知人の紹介で、大阪に営業所を開設するという運送会社の事務職に就くことになった。
はじめは電話を受けるのみであったが、業務に慣れてきてからは元来の好奇心も手伝って、社内の仕事に関心を抱くようになる。
「配車マンの方にどんなことしてるんですか?って聞いてみたら、やってみるか?って言ってもらえたんです。楽しそうだから、やります!って(笑)」。
トラックの配送順序を決める配車作業は物流業務の重要な仕事。
石原さんは運送会社の業務にのめりこんでいき、入社から10年経たずに運行管理者の資格を取得する。
当時、この資格を持つ女性は全国にほとんどおらず、時には心ない仕打ちを受けることもあったという。
それでも原動力は「仕事が楽しい」という思い。
その運送会社では取締役となったが、労働問題に寄与することができればという思いから、2006年に社会保険労務士の資格を取得した。
現在は運送会社に特化し、企業の顧問、アドバイザー契約を結ぶ石原さん。
相談を受ける運送会社の規模や内容はさまざまだが、大手企業だから就業規則が整っているというわけではないという。
「相談を受けていて感じるのは、経営者と従業員のコミュニケーション不足と思えることが多いですね。些細なことですが、社長が一言ありがとう、と感謝の気持ちを伝えれば問題にならなかったんじゃないのかな?というようなこともありますよ」。
士業という職業柄、セカンドオピニオンとして相談を受けることも多いが、石原さんに疑問が残ることも。
「私たちは専門知識をいかした交渉や会社へのアドバイスをしていますが、最終的には会社のことは経営者に判断していただくようにお願いしています。社労士さんや弁護士さんにすべて任せているのだからと、経営者が何も理解しようとしないことがありますが、経営者が会社の実態がわからなくていいのですか?という場面は多いです」。
石原さんは「自分の考えはハッキリ伝える」が信条。
時には経営者と喧嘩寸前に意見を交わしあうこともあるとか。
「コミュニケーションはしっかり取っています。経営者にも方向性が違ってきたら指摘してねと伝えています。自分の会社のつもりで頑張るので、一生懸命過ぎることもしばしばありますが…(笑)」。
そんな中、とある経営者から「足腰が立たなくなるまで、うちの会社に来てください」と言ってもらった時は涙がボロボロ出るほどうれしかったと言う。
厳しい経済環境が続く運送業界。石原さんの目にはどう映るのか?
「運送会社同士の横のつながり、ネットワークが少ないのがもったいない。行政対応、是正といったマイナスからゼロに上げる仕事だけではなく、従業員が楽しく働けるゼロから上の会社づくりのサポートをしていきたいです。”人材”ではなく”人財”を育てることが必要ですからね」と語ってくれた。
▲インタビューの間、何度も「仕事が楽しい」を繰り返した石原さん。
▲運送会社のサポートだけではなく、運送会社を顧問先に持つ社労士やコンサルタント向けの勉強会やセミナー講師も多く務めている。
(取材・文/大阪産業創造館 ものづくり支援チーム プランナー 志岐 遼介)