油脂や液糖はもちろん温泉も?!バルク輸送はお任せ!
大阪産業創造館 プランナー 志岐 遼介による連載 【ロジは一日にして成らず】
運送事業者の実に9割が中小企業と言われ、デフレ時代の厳しいコスト要求や原油価格の高騰に伴う経費の上昇など厳しい時代が続く物流業界。大阪産業創造館では、そんな厳しい時代を戦う運送事業者を応援しています。
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vol.3 福塚運送株式会社~油脂や液糖はもちろん温泉も?!バルク輸送はお任せ!~
「バルク輸送」という言葉をご存知だろうか?物流と言えば、トラックが段ボールに包まれた商品を運ぶ姿を想像してしまうが、運ぶ商品は固体とは限らない。今回は液体・粉末状の商品を包装せずに輸送する「バルク輸送」を長年にわたって主力とする福塚運送株式会社の福塚正徳社長に話を伺った。
「祖父が運送の仕事を始めたことがキッカケで昭和22年に創業しました」。戦後、急速に経済成長を遂げる日本において製造業の活況ぶりは運送会社にも好景気をもたらしていたと言える。創業当時から八尾市・柏原市を拠点としていた会社の転機は地場産業によるものであった。
当時、近隣は河内木綿の産地として栄えていたことから、綿の実から採取される綿実油メーカーも多く、油に関わる仕事が多かったという。
当初は何本ものドラム缶に油を詰めて輸送する手段を取っていたが、発送前に油をドラム缶に詰める作業や、納品先でドラム缶から油を移す作業が効率的ではなかった。そこで、タンクローリー車に油を目いっぱいに詰め込んで輸送するという現在のバルク輸送方式にシフトすることになった。
「私たちがタンクローリー車を用意して仕事を取りに行ったわけではなく、顧客から求められてタンクローリー車を導入しスタートできたという環境には恵まれていました。多くの方の紹介のおかげで今に至っています」と福塚氏。
バルク輸送はドラム缶を用意する手間も省けるため、月に10トン以上の輸送を行う場合は顧客にもコストメリットがでる。現在は食料品油の輸送が主力であるが、時には温泉水の輸送や緊急の給水作業の引き合いもあるという。しかし、タンクローリー車はタンクごとに積載可能な品物が異なるため、液体であれば何でも輸送できるものでもないという。
「私たちが扱っている商品は食品が多く、顧客から高い品質基準を要求されます。その対応力がノウハウとなり、やがて強みとなります」。タンクの適合の問題はあるが、バルク輸送の基本的なノウハウは同じ。そのため、現在は取り扱っていない石油や化学製品の輸送の案件がある場合は、協力会社に輸送を依頼するなどして、積極的に仕事に向き合っていく方針だ。
若くエネルギッシュな福塚社長。経営者としてこれから10年、20年先をどのように進んでいきたいか質問してみた。
「自社にしか出来ない仕事をどれだけ作っていけるかは意識しています。また自社だけではなく、業界全体を盛り上げていきたいですね。運送業界が人手不足になっている理由は、業界に魅力を感じてもらえていないというのが一番だと思っています。これからは若い人材の採用にも力を入れていきたいですね。30名を超える従業員で私より年下は2名だけなんです(笑)。若い社員には免許を取得するところからサポートするような体制を作りたいと思っています。今は業界として厳しい状況ですが、実は10年後がどうなってるか楽しみなんですよ」。
タンクローリー車は現在36台保有。油脂と液糖で車両がわかれている。
運送業界のイメージ改善に意欲的な福塚社長。「小学校への出前授業なども喜んでいきますよ」とのこと。
(取材・文/大阪産業創造館 ものづくり支援チーム プランナー 志岐 遼介)