積み重ねた運送のノウハウ、負ける気はしない
大阪産業創造館 プランナー 志岐 遼介による連載 【ロジは一日にして成らず】
運送事業者の実に9割が中小企業と言われ、デフレ時代の厳しいコスト要求や原油価格の高騰に伴う経費の上昇など厳しい時代が続く物流業界。大阪産業創造館では、そんな厳しい時代を戦う運送事業者を応援しています。
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vol.9 株式会社久遠 ~積み重ねた運送のノウハウ、負ける気はしない~
今回ご紹介する運送会社は大阪市大正区に本社を構える株式会社久遠(くおん)。
「従業員、荷主さん、気の合う仲間と久しく永遠に」という思いから社名を付けた代表取締役社長の新垣氏に話を伺った。
家業が運送業ということもあり、18歳で免許を取得してから、すぐに運送ドライバーとなった新垣氏。平成23年に株式会社久遠を設立した。
「運転免許の改正があったり、ドライバーがこれからの時代は少なくなっていくのはわかっていたから、小型メインの運送会社を設立しました。最初の1年間は自分ひとり。車両も持ちませんでした。自分ひとりでどこまで出来るか、ということに挑戦したかった。2年目以降は荷主さんから自社車両を持ってほしいという要望を受けたり、ドライバーさんから雇ってほしいという売り込みもあって、少しずつ車両も従業員も増やしています」。
○○運送、○○ロジスティクスという社名の多い運送業界で、あえて「久遠」という社名を付けたのは「運送だけの会社にしたくなかった」という理由から。
メインは運送業におきつつも、沖縄で飲食店の経営や、軽トラックのレンタルなど事業内容は運送業だけに縛られない。「運送会社とは思えないくらい、会社の定款にはさまざまな事業を載せていますよ」と、笑顔で語る。
一方で、現在の本業である運送業には強いこだわりを見せる。建築資材の運送がほぼ100%、特に鋼材系の運送が多い。
会社の強みは?の問いに「げてもん」と即答する。げてもんとは、姿や荷格好が悪いために積みにくい荷物のこと。荷崩れが起きやすいので、積載効率も悪い。
「ほとんどの運送会社は嫌がりますよ。ウチはそういうものを積極的に受け入れてきた。社員も最初は嫌がります、でもポイントをしっかり押さえればきっちり積めます。普通車のドライバーはげてもんを積んでるトラックの近くを走るのは嫌だと思うんです、いつ崩れてくるかわからないように見えるので。でもウチのトラックは、ある意味で芸術品のように綺麗に積んでます(笑)」。
差別化のしにくい運送業界だけに他社が敬遠する仕事にも積極的に取り組むことで、顧客の信頼を勝ち取っている。他社が敬遠する仕事を引き受けることができるのも、新垣氏の持つ長年の経験とノウハウがあってこそだ。
会社の成長に合わせて人材の採用も行っている。
20代から60代まで幅広い年代の社員が顔をそろえるが、安全ミーティングや年2~3回の社内バーベキューなど懇親の機会は積極的にとっていて、「楽しそうにやっていると思う」と社内の雰囲気づくりに手ごたえを感じている。
最後にこれからの経営について伺った。
「18歳の時から26年やっている運送のノウハウは負ける気はしない。これからも慌てずに、ぼちぼちと会社を成長させていきたい」。
(取材・文/大阪産業創造館 ものづくり支援チーム プランナー 志岐 遼介)