「ゴムに塗る!」工業用ゴム塗料で潜在的なニーズを掘り起こす
市場縮小で高付加価値の商品開発に注力
塗料で着色することが難しい素材として知られるゴム。そのことは、タイヤや緩衝材をはじめ私たちの身の周りで目にするゴムが素材の色である黒のまま使われていることでもわかる。ターナー色彩はその常識を覆す工業用ゴム塗料をこのほど開発した。
同社はもともと水性絵具をはじめとする一般消費者向けの商品を製造してきた。しかし、パソコンを使ったCG(コンピュータグラフィクス)の台頭や印刷技術の進歩により絵具や塗料が活躍する場は減りつつある。
そこで、ここ10年ほどは新市場の開拓に向け、壁紙や布、ビニールなどの素材に描ける付加価値の高い商品の開発に力を入れてきた。
タイヤのツヤ出し剤の技術を転用し、ゴム塗料分野へ
そんな折、入社してきたのが大手塗料メーカーで長年技術畑を歩んできた西村氏。以前にタイヤのツヤ出し剤の開発を通じて得たノウハウが、ゴムに使う塗料に転用できる可能性を見出した。
「伸縮性のあるゴムにはしっかりと塗料が浸透しないと伸び縮みした時に追従できないのですが、樹脂の配合に工夫を凝らすことで克服できました」。ゴム用塗料の使い道を求め、取引先に当たってみると、野球場のラバーフェンスやエスカレーターのハンドレール(手すり)の補修用塗料として使いたいというニーズが出てきた。
ゴムへの着色を難しくしているもう一つの要因は、ゴムに含まれる劣化防止剤や離型剤として使うシリコンが表面に付着して、塗料の密着を邪魔することだ。そこで、表面の付着物を除去すると同時に接着の役割も果たす密着向上剤を開発。これに特殊樹脂を使った塗料を組み合わせることで密着不良の問題点をクリアした。
企業からのニーズで工業用途の可能性広がる
「BtoBへ用途を広げたい」と考えた地平氏だったが、長らく一般消費者向け製品を手がけてきただけに見当がつかない。そこで昨年3月、大阪産業創造館によるゴム工業展に出展したところ予想外の反響があった。
その後も大阪、東京で積極的に出展。大手電機メーカー、タイヤメーカー、車両メーカーなど「“ゴムには塗装できない”と思い込んでいた企業の担当者が大いに関心を持ってくれた。工業用ゴム塗料の可能性に気づかせてもらった」。現在は各社からの依頼をもとにサンプル作りが進められている。
「今後は水性塗料の安全性もアピールしたい。着色できないがゆえに他の素材に置き換えられていた分野でもあらためてゴムへの見直しが進むかもしれない」と地平氏。その先にまだどのようなニーズが眠っているのか楽しみは尽きない。
【こんなところで使ってます】
▲野球場のラバーフェンスやエスカレーターのハンドレール、風船、ウェットスーツのほか、タイヤ、ジャバラ・パッキン・Oリングなどの自動車・鉄道車両部品、ホース、ゴムパッキンなどの水道部品に塗装が可能。塗装することで見た目の美しさだけではなく、表面を保護する効果も得られる。
【こんなところで使えるかも!?】
▲素材そのものの色である「黒」のまま使われていたタイヤや磨耗に負けない強度が必要なエレベーターのハンドレールにデザイン性や装飾性を付加した色づけができるように。
代表取締役社長 地平 宏氏(左)/研究開発室開発リーダー 西村 善彦氏(右)
ターナー色彩株式会社
代表取締役社長
地平 宏氏
設立/1946年
従業員数/100名
事業内容/中学、高校の多くに採用されている水性絵具の「ポスターカラー」や「アクリルガッシュ」で国内トップシェアを誇る。塗料分野では、テーマパークの特殊塗料のほか寺社仏閣の修復塗装も手がけている。