めざすは規模の追求ではなく「強い会社」
社長と共に人生を賭す覚悟
私は二代目というより、社長である父とこの会社をつくり上げてきたという思いがあります。父が立ち上げた会社に入社したのは創業から4年後のことでした。外資系の会社で働いていましたが、父の事業が軌道に乗り始め、手伝うことにしたのです。
ところが入社早々に危機が訪れました。中国や台湾に向けたバルブの輸出事業で業績を伸ばしていた矢先、急激な円高の影響で売上げが激減したのです。「この会社に入ったのは間違いだったかもしれない」。正直そんなことも考えましたが、社長の決意を聞いて迷いが吹っ切れました。いよいよ会社が危ないというとき、「わしは台湾に工場をつくり、現地に駐在する。お前は日本で営業をがんばってくれ」と切り出されたのです。円高の状況で会社を立て直すためには、事業構造を輸出から輸入に転換する必要がありました。しかし品質が悪ければ日本の顧客には受け入れられない。そこで社長自ら台湾に出向し、品質管理を徹底するというのです。「親父は人生を賭して会社を興し、事業を成功させようとしている。その思いに何とか応えたい」。そう覚悟を決めました。
社長が海外の製造部門を取り仕切り、私が日本の営業面をカバーする。二人三脚で社長と奔走する日々の始まりでした。お互いの意思疎通の手段は「車」でした。社長が帰国した際に私が出迎え、運転しながら仕事の相談をするのです。面と向かって話しにくいことも不思議と車内では話せてしまう。「大切な経営判断はすべて車の中」といえるかもしれません。
社員の信用がないと社長は務まらない
艱難辛苦を乗り越え、右肩上がりの成長を続け、2009年に世代交代する予定でした。ところが、「なにわあきんど塾※」の宿題で、社員に専務のイメージをアンケートで聞いたところ、私に対する期待度が著しく低かったんです。社長に相談すると、「社員の信用がないと社長は務まらない」と厳しい言葉。アンケートの結果はショックでしたが、社員への指示の仕方など思い当たる点もあって不思議なくらい、すっと腹に落ちました。世界不況で業績が縮小傾向に入ったタイミングだったこともあり、社長就任を1年後に先送りすることになりました。現在は、「自分が信用することが社員の信用に繋がる」ことを肝に銘じ、会議の進め方、コミュニケーションなども少しずつ改善しています。
5年後の目標は「強い会社をつくること」。規模の追求ではなく、足腰の強い、体力のある会社をめざします。
株式会社コンサス
専務取締役 土井 靖士氏
ステンレス製工業用バルブ、サニタリーバルブなどを独自の品質管理システムで海外生産し、日本で販売する流体制御機器メーカー。メーカーの専門知識と商社のフットワークを活かして営業し、海外工場では、日本人スタッフによる徹底した品質管理体制を築いている。