職人や社員が誇れるものづくりで下請け体質から脱却

昨年10月、大阪・南港で開かれたインテリアの展示会「LIVING&DESIGN2017」のあるブースに人だかりができていた。その中心にあったのはヘラ絞り加工機と職人。回転をかけた円盤状のアルミ板が、ヘラ棒と呼ばれる工具によってみるみる漏斗(ろうと)のような形状に変わっていくさまにどよめきが起こる。

盛光SCMが満を持して送り出した照明器具の自社ブランドの第一弾シリーズ「ALED(アレッド)」の国内デビューは上々だった。

ALED

1961年の創業以来、大手照明器具メーカーの下請け工場として歴史を刻んできた。だが、2008年大規模に本社増築した直後に起こったリーマンショックと照明業界を大きく変貌させるきっかけとなった東日本大震災。日本の製造業を取り巻く環境が激変し、急激な売上低迷による経営不振に陥った。

新事業で挽回を図ろうと奮起していた先代に代わって、7年前に経営再建と多額の借金を引き継いだのが先代の娘、草場寛子氏だ。当時35歳。「いつ潰れてもおかしくない会社。もし負けたとしても最期の日まで攻め続けたい。つくりたい!と思えるものをつくって復活したい!」と心を決めた。

社長に就任した草場氏はさっそく全社朝礼で「下請け体質からの脱却」を宣言。空間に合わせ自由に部品を組み合わせられる照明器具をメーカーとして製造することにした。ブランド名は空間に必要(Need)とされる光(Light)で「NEEL(ニール)」。

オリジナル製品を最初につくるにあたって決めていたのは、祖父の代から磨き上げてきたヘラ絞りの技術をデザインに生かすこと。「うちの主役はものづくりの職人。そこに光を当ててメイドインジャパンがどこまで世界に通用するか試してみたいと思った」。

自社ブランドへの挑戦に合わせて2階の事務所スペースを3階組立工場の横に移動。元にあった事務所スペースは、全社員の手でショールームと商談スペースを兼ねたスタジオにリノベーションした。

「社長が代わり、ある日突然メーカーになるぞと旗を掲げても、先代の頃からいる社員の心は簡単には変わらない。それならば、これから会社は変わるんだという姿勢を形として示していこう」と考えた。

さらに新たな事務所として移動したスペースは、組立工場との壁も取り払い、事務・開発・製造部門などを1拠点に同居させ、各事業部との障壁をなくし一体感を生み出した。

今後は、働き方やコミュニケーションの取り方を改革していこうと、オフィスに安らぎやリラックス空間を取り入れ、雑談の中からアイデアが生まれる環境を整えていく。昨年末には社員参加型セミナー「社員がイキイキと働けて、活気のある会社づくり」も開催し、活発に意見が出された。

国内の展示会に先立って昨年1月にはデザインの本場、イタリアでの展示会にも出展。2年目の出展となった今年は、充電式のコードレスランプを実現し、カラーバリエーションやラインアップも多彩にそろえ、好評を得た。

「世界に打って出るためにも社員一丸となって新しい発想で取り組んでいかなければ」と話す草場氏。その先には東大阪が誇るものづくり力を世界にもっと発信していきたいとの思いもある。

「量産には欠かせない熟練の技術はヘラ絞り以外にも山ほどある。うちが先陣を切って成功モデルを示すことができれば、後に続こうと思ってくれる会社も出てくるはず」と自らにさらなる使命を課す。

さらに年末のセミナーで社員から出てきたアイデアを、今年度は社員が主体となって実行に移す取り組みもスタートさせる予定だ。メーカーとして独り立ちするために、日本が誇るものづくり技術を世界に広げるために改革は続く。

代表取締役 草場 寛子氏

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

2018年04月06日
株式会社盛光SCM
代表取締役  
草場 寛子氏
事業内容/照明機器の開発・設計・製造・販売、金型の設計・製造・販売

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