【飲食店開業への道】軸はしっかり変化はいとわず「ほっとできる店」に
41歳で「ホルモン山大」を開業した山本氏は、出前寿司店で5年、つけ麺店で9年、厨房と接客の経験を積んでから独立を決意した。なぜホルモンを選んだのか。「ぼく自身ビールが大好きで、ビールに最も合う食べ物は何だろうと考えた末にたどり着いたのがホルモンでした」。そしてホルモン店を食べ歩くうちに出合ったのが豚ホルモンだった。「牛のホルモンと比べて味はそん色がなく、コスパも高い。これでいこうと決めました」。
大阪・上本町の豚串ホルモンの名店「チエちゃん」で修業を積みながら、寺田町にあるホルモン肉加工店を掛け持ちして、知識も入れた。予定していた2年の修業期間を終え、店舗探しをしていたとき「チエちゃん」のオーナーから「うちのFCとして店を出さないか」と打診があった。「FCだと自分の思うような店づくりができないのでは」と当初は気乗りがしなかったが、聞けば味付けや調理法以外は屋号・仕入・商品構成・価格も自由にしてよいという。それならばメリットの方が大きいと考え、受け入れることにした。

代表 山本 大介氏
当初は、40~60代の男性会社員をターゲットに内装も商品も考えていたが、インバウンド客が多いとわかるや、黒門市場で人気の高い「和牛イチボ串」を新たに加えた。出張で周辺のホテルに滞在するビジネスパーソンや周辺マンション居住者からの「もっと遅くまで開けてほしい」という要望に応え、ランチ営業をやめる代わりに閉店時間を23時から深夜1時にずらした。状況や顧客に応じて柔軟に対応する姿勢は、長年の飲食店経験で培われたものだ。
「味と値段はもちろんのこと、仕事終わりに店に来て私やスタッフとの会話も楽しみながら、ほっとできる空間をめざしている」という山本氏。アルバイトスタッフには「ぼくの考えを理解して接客をしてくれること」を優先に、以前一緒に働いた人や親せきなど、信頼できる人を中心に採用している。
開店から2年余り。着実に売上げは伸びつつあるが、「月ごとの売上げの振れ幅が大きいこと」が悩みで、常連客をさらに増やしていくことが目下の課題だ。この間にも原価が上昇し、飲料の値上げの際には、“仕入れ価格がこれだけ上がっているから”と説明を怠らないようにしている。「料理の価格についても、お客さんは“もっと上げてもいい”と言ってくれるのですが、うちはリーズナブルさを評価して来てもらっているので、そこは甘えずに守っていきたい」とあくまでも店の強みは崩さない姿勢だ。まずは今の店を安定させることに専念し、「5年後くらいに2店舗目が出せたらいいですね」。客との信頼を大切に、地に足を付けて店を営んでいる姿勢が終始伝わってきた。
(取材・文/衛藤真奈実 写真/福永浩二)
【 開業資金 】 1,100万円
自己資金500万円と融資600万円の1,100万円。内装費に約450万円、厨房機器や食器類に約300万円を使い、あとは運転資金とした。
【 立地選定 】
当初は自力で探したが、本部のネットワークと信用力を生かし紹介された物件の立地、条件がほぼドンピシャで中央区のオフィス街に決めた。
【 店舗デザイン・設備 】
「おしゃれ」というよりは「ホッとできる空間」をめざし、ポスターなどを使い昭和の雰囲気を演出している。
【 開業までに要した期間 】 2年
【 「あきない虎の穴」担当者からのコメント 】
「虎の穴」では珍しい飲食業経験者の山本さん。事前ヒアリングでは「経験もあるし、参加する必要ないんじゃない?」と言った覚えがありますが、「現場の経験はあるけど、開業にあたって何をしたらいいかわからないのでぜひ参加したい!」という想いを受け、参加することになりました。講師との面談では、やりたいお店の業態について「どこにでもあるような店でおもんないな~」と言われて悩んだり、物件がなかなか見つからなくてくじけそうになったりしましたが、結果的にいい物件に巡り合えましたね!近いですし、また講座の打ち上げで使わせてもらいます!(大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)
【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora
ホルモン山大
代表
山本 大介氏
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270201/27137258/
事業内容/豚串ホルモン
座席数/20席(1階カウンター8席、2階テーブル12席)
開業日/2023年8月