都会で自由に遊べる場を、NEW PARK PROJECTが描く工場跡地からバスケットコートへの転換物語
NEW PARK PROJECTのレンタルバスケットコートは元々は溶接工場だった場所だ。11mの高さがある天井高の開放感は圧巻で、配管はむき出し、大型クレーンもそのまま残してある。
「床はアーティストに壁画を描いてもらっており、アメリカのストリートバスケットコートをイメージした空間に仕上げた。だれもがこの自由な雰囲気を楽しんでほしい」と桑原氏は思いを語る。
会社の集まりやサークルでの貸切が多いが、個人利用者向けには毎朝その日の空き時間を公開している。「75歳の人が1人で来て、そこにやってきた別の小学生と1on1を楽しんだりもしている。人数が足りないと僕らも借り出されてゲームをしている。ボール一つで仲良くなれるのがバスケットボールの魅力」と語る。
高校生の頃、道路沿いにある倉庫の駐車場で自作したリングを置きバスケを楽しんでいた。見かねた父親が、「もっと安全な場所で」と、自身が経営するレストランの駐車場にリングを設置。夜な夜な遠方から人が集まってくるようになった。父はそこからレンタルバスケットコート事業に着手し、4店舗まで広げた。
10数年前にいったんは事業を畳んだものの、桑原氏は子どもたちにとって大切な場所をもう一度復活させたいと考え、7、8年ほど前から物件を探していた。天井の高さは最低でも7m必要で、騒音が気にならないという条件も考慮に入れ、工場跡を中心に探した。「不動産屋さんにも根気強く付き合ってもらった」。
オープンは2021年3月。コロナ禍真っ最中で滑り出しはほぼ稼働できない状況に苦しんだ。5類に移行した2023年5月以降にようやく利用者が増え始め、「スラムダンクの映画公開、ワールドカップの開催にも大きく後押しされた」という。
地域で子どもたちが安心、安全に思い切り遊べる場所が減って久しい。NEW PARK PROJECTという名前には「子どもたちにとって新たな公園になるような場所にしたい」という思いも込められている。インラインスケート、ストリートサッカーなどバスケ以外のスポーツでの利用も多く、親が迎えに来るまで子どもたちが思い切り汗を流す姿を見守っている。また、淀川区と協定を結び、地域イベントを開く場所としても開放している。
「バスケットボールのすそ野を広げながらも、子どもたちにとってのびのび遊べる、地域にとって欠かせない場所として役割を果たしていきたい」。
(取材・文/山口裕史 写真/小寺莉央)