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株式会社OTSが挑戦する、デジタルとアナログが融合した組織強化の一手

2023.06.06

「DXというほど凄いことをしたわけではありませんが、それまでアナログだった社内の経理体制を、外部人材のサポートを受けてデジタル化しました。私と社員の作業効率が劇的に向上しましたね」と、DXを取り入れた効果を話してくれたのは株式会社OTS代表の淀氏。同社は変電所など電力設備の油漏れ修理工事、漏油を防止する「シームコート工法」を使った設備の維持・保全といったBtoB事業をメインに据え、既存ビジネスで培われた知見を用いて「ガラスコーティング事業」などBtoC領域の新ビジネスにも果敢にチャレンジする風土だ。

代表取締役 淀 大輔氏

DX推進について、以前会計ソフトを導入しようとしたが、紙ベースで進めていたので逆に手間が増える結果になり断念したことがあった。かといってIT人材を専任で雇用するのは会社の規模的に難しい。そこで中核人材雇用戦略デスク(大阪府プロ人材)に相談、複数の候補者の中から、経営者や現場に過度な負荷がかからない“優しいDX”の制度設計を推奨するコンサルタントに来てもらうことに。同氏のサポートを受けた結果、「経理スタッフと私の負担が大きく減りました。私の場合だと1ヶ月に換算すると、数日どころか10日ほど新たに余剰リソースが生まれたと感じるほど」と、劇的な効果をもたらしたという。このノウハウは経理スタッフがしっかりと引き継ぎ、紙ベースからクラウド会計ソフトに移行するなど業務の軽減につながった。

効率化を推し進めるのは、社員の満足度を高め組織力の向上を促すのが目的だ。たとえば、経費の支払い。以前は現金手渡しで、突発的な出張などに対してその都度「仮払い」をしていたが、クレジットカードを導入したことで経営者も社員もストレスが減りミスもゼロに。社員から喜んで受け入れられた。DX推進に際して起こりがちな「スマート化したい上層部と、従来のやり方を好む現場」といった乖離現象も“優しいDX”が功を奏し、スムーズに浸透していった。一方で、工程管理はこれまで通り、使い勝手が良いホワイトボードで共有するなど、デジタルとアナログを融合させているのも、「DX推進がスムーズに進んだ要因のひとつ」と淀氏は分析する。

工数はわかりやすいアナログ表示で、優しいDXを推進している。

業務が軽減されたことによって、淀氏の時間は新規事業の取り組みや社員とのコミュニケーションに充てることができるようになった。同社は、現場で支える社員に対して、技を磨き力を発揮する職人としてだけではなく、自分自身が広告塔として活躍する“営業”の役割も担うことを求めている。既に電力会社や大手電鉄会社などのベストパートナーとして豊富な実績と信頼を得ている同社だが、「お客さまから『OTSの社員は清掃ひとつとっても、しっかり綺麗な現場にしてくれるから頼もしい』と褒めてもらえるのが、何よりもうれしい」と、淀氏の表情がほころぶ。社員の頑張りや成果に報いるため新たな人事評価制度づくりにも着手したが、その時間もDX推進のおかげで生まれたという。

商材のプロモーションにも大阪府プロ人材の知見を借りている。新たに手掛ける塗り壁材「デコれるウォール」では、地球環境に優しい日本火山由来の素材を用い、保温性と耐熱性に優れ悪臭などもブロックする特色を広く周知するため、見栄えも訴求力も納得のいく販促物の制作を依頼した。SNS運用では単純にフォロワーを増やすのではなく、“ペットの臭いで困っている消費者”を想定し、ペット分野で影響力を持つインフルエンサーとコンタクトをとって、ターゲットにアプローチするといったやり方を実施。「SNSを使った拡散など、社内になかった新たな手法を学べるので、社員たちから好評です」と、社内にナレッジを蓄積している。

枚方市内にある自社ショップで購入可能な「デコれるウォール」。

「既存事業とお客さまを大切にしながら、将来的にはメーカーとしての地位も確立させたい」と熱く語る淀氏。「人の喜ぶ顔が好き」を原点に、環境活動といった社会貢献にも注力しながら組織力を強化し、成長を続ける同社にこれからも目が離せない。

(取材・文/仲西俊光)

株式会社OTS

代表取締役

淀 大輔氏

https://ots-kk.co.jp/

事業内容/電力設備の油漏れ修理工事事業