ものづくり

ラジコン用エンジン開発85年の職人達が突き進むその先は 無人航空機業界へ挑む開発型企業【後編】

2022.03.08


部屋にはエアコンプレッサと12トンプレス、そして卓上ボール盤。
ものづくりを愛してやまない大阪産業創造館プランナー エグチがお送りする『ものづくり』マニアックコラム。

【 第2回 】ラジコン用エンジン開発85年の職人達が突き進むその先は
無人航空機業界へ挑む開発型企業(後編)

今回お話をお伺いしたのは
小川精機株式会社
営業部 販促係 宮田 和雅さん(右)
営業部 営業課課長 吉田 昌史さん(左)

<最初から読む>
【 第2回 】ラジコン用エンジン開発85年の職人達が突き進むその先は 無人航空機業界へ挑む開発型企業(前編)

「ここに星型があります。」
え、今なんて言いました?ふと吉田さんの指し示す先を見るとそこには小さな星型エンジンが。

このコラムをお読みのみなさん、この感動がわかりますか。わかりますよね!?かの有名なゼロ戦(零式艦上戦闘機)も星型14気筒エンジンを搭載していましたね。

ゼロ戦(零式艦上戦闘機)

「ここに直列もあります」

なんと、そこには直列4気筒OHVエンジンもあるではありませんか。私は舐めるように見てしまいます。

ここまでの多種多様なエンジンを開発されるのは、とてつもなく大変だったのでは……。

「やはり産みの苦しみはありますが、みんな楽しんでやっているんでね。それが強みです。趣味の世界といわれますが、逆にその業界だからこそ、新しい技術を積極的に投入できるんです。」

競技用のラジコンカーにつかわれるエンジンの排気音は、それはもう最高です」と宮田さん。本物のレースカーのエンジンはF1でも1分で18,000回転前後ですが、ラジコンでは40,000回転は回っているんです。うんうん、想像するにその甲高い音はたまりません。「11,000までしっかり回せ」ではなくて40,000回転ですか。それはあの秋名山のハチロクも敵いませんな。

小さい排気量(2.1cc)なので回転数でパワーを絞り出すんですね。くう~超高回転エンジン、シビれます!!

エンジン自体の部品の組み合わせも精密で、気密性を維持するため1つのシリンダーに対して合うピストンは1つのみ。究極の組み合わせなんですね。

「実は精密なエンジン製造技術を軸に、産業機器部門にも進出しているんです」。そういって吉田さんが制御機器と一体になったモデルを取りだす。
なんだこれは。何に使うエンジンなんだ……。

「OS professionalというシリーズなんですが、対象はUAVと呼ばれる産業用機器なんです。無人航空機やドローンですね」。

ほう、ドローン。普通にエンジンで飛ぶドローンってことなんだろうか?
いや、ちがう。プロペラはついていない。

よく聞いてみるとエンジンの力で飛ぶのではなく、エンジンで発電してドローンの航続距離を伸ばすためのもの。いわゆるレンジエクステンダーという代物で、電気で動くドローンをハイブリッド化し飛行時間を大幅に伸ばすことができるという。自社の飛行実験では11時間もの長時間のホバリングを達成できたという。

このレンジエクステンダーの開発に成功したのは国内では小川精機のみで、ドローンを活用する企業や機関から続々と発注があるという。国外への需要も増えつつあり、今後も無人の観測機や偵察機など過酷な場所を長時間飛行するものに導入の流れが広がっているらしい。

「エンジンを作れる、という強みがあったからこそ開発できた製品で、空を飛ばすために軽量化が必要だったり自社の技術や飛行機用エンジンを設計できるノウハウが、迅速な製品化につながったと言えます」と吉田さん。

測量など業務で使用するドローンは、重たいバッテリーを交換・充電したり、そもそも充電設備がないなど、兼ねてから運用が困難であったが、レンジエクステンダーの使用によりその手間も軽減され燃料を持っていけばよくなったので、4日かかる仕事が1日になったという嬉しい報告もあるそう。

エンジンと電気の良いところをとって、活用できる製品をどんどん開発していくことで、今までとは違う形で皆さんのお役に立ちたいとのこと。

最後にお二人に小川精機さんとしての意気込みを率直に聞いてみた。

宮田さん「ラジコン用エンジンに関しては全ての競技カテゴリにおいてチャンピオンを獲得しています。大阪のものづくり企業として、こだわってこだわって完成されてきた技術があります。そのチカラを新分野に存分に活かして行きたいと思っています」。

吉田さん「商品の価値はお客様が決めるので、そのために恥ずかしくない商品をつくっていかないといけない。逆にそうやって認められているからブランド力がついていると思っています。ブランディングだけをしていくのではなく、真摯なものづくりがお客様に認められることで自然と出来上がってくるブランド力があるので、そのやり方その歴史を守り続けていきたいです」。

聞きましたか皆さん。大阪のものづくり企業のアツいアツい想いは皆さんのもとに届きましたでしょうか。高回転で回るエンジンの排気マニフォールドのように熱いですね。コア技術を活かした新規事業への展開、楽しみです。
大阪の誇る、いや日本の誇るものづくり企業の今後に期待しましょう。

私エグチも、そんなものづくり企業の方をご紹介すべくまた大阪を駆け巡ります。
あ、今気づきましたがロータリーエンジンについて冒頭で少ししかお話していませんでしたね。このコラムの読者様にはきっと、きっとロータリーエンジンが好きで好きでたまらない方もいらっしゃいますよね?え、いない?

次回はそんな皆さんの声にお応えして、模型用ロータリーエンジンを設計開発する企業へお伺いします。アペックスシールもすべて自社製。車と同じ部品点数の超精密なロータリーエンジンです。皆さん、ぜひお楽しみに。

 
(取材・文/大阪産業創造館ものづくり支援チーム プランナー 江口幸太)

 

大阪産業創造館ものづくり支援チーム プランナー 江口幸太
東京都出身。3代続く江戸っ子。クルマが大好きで二級整備士資格を持つ機械マニアなプランナー。 愛してやまない製造業の支援を担当する。ものづくりの観点から大阪のホビーやクルマに関するコラムを執筆中。「漢のロマン」を追い求め、日々大阪を奔走する。

小川精機株式会社

営業部 販促係 宮田 和雅氏
営業部 営業課 課長 吉田 昌史氏

https://www.os-engines.co.jp

事業内容/小型エンジンの製造・販売