ものづくり

《講演録》製造業の組織改革~実践企業が語る士気を高める戦略とは~【2】

2022.01.17

 
◉モチベーションが急上昇

弊社では、社員のほとんどが現場の職人です。なので、社員には目の前の製品をしっかり作るよう伝え、経営者である私は徹底的にコストを見直し、会社にお金が残るように努めました。

中小企業が利益を上げるには、とにかくスピードが大事です。社員には、プロ意識を持って与えられた時間内に仕上げることに専念するよう徹底するとともに、2年ほどかけて全員がすべての部署を経験し、社員全員がどんな仕事もこなせるようにしました。

さらに、自己啓発の社内研修を廃止したり、女性社員が増えてきたので夜の飲み会の代わりにランチ会を開くようにしました。そうした仕組みを構築していく中で、社員から感謝される実感を得られるようになったのです。

また給料をかなり上げ、休みを取りやすくしました。仕事ではどんどん新しいことにチャレンジさせるので、社員のやる気とモチベーションは相乗的に上がっていきます。そうすると次第に不平や不満はなくなり、会社を辞める人がいなくなっていきました。

 
◉技術を根絶やしにしない

弊社再建の歩みを振り返ると、社員一人ひとりをよく見ていくことで、どうすれば問題解決できるのかが分かるようになりました。社員と日々膝を突き合わせ、どうするのがいいのかを日々考え抜く中で、前に進んでいけたように思います。

経営者は、使命とするところや目指すところにブレがあってはいけません。私たちの会社が持つ「熱間自由鍛造」という技術は、技能士の資格がなくなるほど人が減っていますが、弊社にしかできないことがたくさんあり、「この技術を絶対に根絶やしにしない」という強い思いを持っています。

従業員にいつも話すことは、日本の強みの一つは、製造業を基幹産業とするものづくりにあるということ。また、国防という観点からも自由鍛造は重要なので、その点もこれからしっかり伝えていきたいと思っています。

 
(文/安藤智郎)

 

田中 君枝氏(東福鍛工株式会社 取締役副社長)
実家家業の技術を絶やしたくないとの思いから、夫妻で事業承継。社長は夫の芳洋氏。就任直後は経営難に陥っていたが、自ら営業など対外的な業務を担うとともに従業員の士気の向上にも力を入れ、徐々に経営を立て直した。現在も社員教育を積極的に推し進めている。

東福鍛工株式会社

取締役副社長

田中 君枝氏

https://www.toufuku-tankou.co.jp