《講演録》社運を賭けた単品勝負戦略!〜八天堂のくりーむパンを愛され続ける商品にするまで〜【前編】
♦どん底で知った親の偉大さ~弟のような人物を自分は育てられるのか~
とはいえ、目の前の数字は一向に回復せず、とうとう残り1・2ヵ月しか会社がもたないというところまで来ました。その時に弟が「2,000万円貸すからなんとか頑張ってほしい」と申し出てくれました。弟だって自分の家族や店があって、決して余裕があるわけではないのに、好き放題やってきた私に向かって手を差し伸べてくれたんです。弟は本当に恩人です。そして、弟のような人物を育ててくれた両親の偉大さに気づかされました。
それまで私はどこか親のことを見下げていたところがあったように思います。親は1店舗の小さい会社だけれど、自分は13店舗も経営して、売上げも何億もあって、社員も何百人もいて…と。とんでもない人間ですね。
心の底から謝ろうと親のところに行くと、父親が「すまんな孝雅。申し訳ない、死ぬなよ。」というんです。ここまで親に心配かけて、しかも先に謝らせて、私は泣き崩れるしかありませんでした。それから私の価値観が一変しました。
>>>《講演録》社運を賭けた単品勝負戦略!〜八天堂のくりーむパンを愛され続ける商品にするまで〜【後編】に続く
(文/原きみこ)
森光 孝雅氏(株式会社八天堂 代表取締役社長)
1964年広島県三原市生まれ。有名パン店での修行を経て1990年八天堂へ入社。2006年3代目社長として就任。かつては無理な店舗拡大で倒産危機に陥ったが、無添加パン卸売事業で経営を立て直し、その後100種類あったパンを1種類に絞り「くりーむパン」の開発に取り組む。2009年スイーツパン専門店としてくりーむパン1品で東京進出を果たし、駅ナカや百貨店を中心とした出店で、スイーツパンの手土産市場を確立した。今後はくりーむパンを軸とした食のテーマパークの展開を計画するなど、進化し続けるビジネスモデル開発で未来に無くてはならないソーシャルイノベーションカンパニーとして未来を切り拓き、同時に人を大切にする会社として未来に必要とされる人財創造企業をめざしている。