Vol.19 従来型の商店街において“その他の飲食料品小売業”が最も稠密に集積している「東成区」
今月は久しぶりに小売業に着目した分析を行いました。
人口規模では横浜市よりも100万人少ない大阪市ですが、小売業の事業所数(平成28年)を見ると、2万件弱の横浜市に対して、大阪市は2万7千件近くも集積していることから、小売業がいかに密集しているかがわかります。
小売店での購買客は、地域住民のみならず、買い物目的等で来訪する圏域住民や、通勤・通学者、旅行客、出張ビジネスマンなど多岐にわたることから、店舗の立地は梅田や難波などの都心部の商業地域に集中します。
ここでは、そうした市街地型商業集積地区(集積細分No.12)ではなく、駅周辺型(No.11)や住宅地背景型(No.13)の商業集積地区(平易な表現では商店街、30以上の店舗集積が必要)に着目して分析することにします。
こうした商店街での主要顧客は一般的に地域住民となることから、産業中分類では「飲食料品小売業」や「織物・衣服・身の回り品小売業」が固有業種としては多くなり、北区や中央区などの都心以外の区では「飲食料品」が最多の業種となります。(注:中分類では「その他の小売業」が最多となる区も多いですが、種々雑多の小売店が混ざるため、分析イメージがわかないため分析対象として面白みに欠けます。)
そこで、中分類として「飲食料品小売業」に着目することとします。
「飲食料品」の内訳は、小分類では食品スーパーなどの“各種商品”と、単一的商材を売る“野菜・果実”、“食肉”、“鮮魚”、“酒”、“菓子・パン”、そして“その他の飲食料品”の7分類になります。
昔ながらの八百屋、肉屋、魚屋、酒屋といった専業のお店がめっきり減少したことが実感されるように、これら4業種の店舗数はどの区でも少ない状況です。
また、“酒”小売店でも、いわゆるディスカウント系が支配的で、菓子なども販売している業態が多くなっています。
市内の24区全てに共通するのは、小分類で“その他の飲食料品”の事業所数が最も多いことで、全体の38~55%を占めています。近年急増したコンビニエンスストアもこの業種に該当するのでシェアが高くなっています。
しかし、コンビニでは、雑誌や市販薬など飲食料品以外の商品や、菓子や酒類なども販売しているため、本来の“その他商品”小売業のイメージ(例:豆腐・かまぼこ等の加工食品、料理品、乾物、米穀類)とは随分と異なります。
そこで、コンビニ以外の“その他の飲食料品”が盛んな区を分析することを試みます。平成26年の商業統計調査では“その他の飲食料品”の事業所数や従業者数を区別に集計・公表されていますが、その内のコンビニ(細分類業種)は区別に公表されていないため、民間企業の情報で代用することにします。
図1はコンビニを除く「飲食料品小売業」事業所数と“その他の飲食料品”事業所数、ならびに“その他の飲食料品”の事業所割合を示し、その割合が20%以上の区について、割合が高い順に並べたものです。
この結果、生野、東成、旭の3区では30%を超えており、他区よりも“その他の飲食料品”の割合が多いことがわかります。
コンビニの統計は民間の推計値であることから、この上位3区について公のデータを用いて再検証することにします。
商店街のうち、冒頭で述べたように、駅周辺型と住宅地背景型の、いわゆる従来型の商店街を抽出し、そこでの“その他の飲食料品”の事業所数と従業者数を比較しました(表1)。
この結果を見ると、事業所数では生野区、従業者数では東成区が、それぞれトップですが、行政区域面積の広さを勘案すると、総合的に判断すれば、東成区の方が集積密度では高いと言えましょう。
統計データからはこれ以上のことは言えず、“その他の飲食料品”とはいったい何なのかはわかりません。
両区の境界には鶴橋駅があり、その東側には飲食店としては焼肉店や韓国料理店が、また、その他の飲食料品としてはキムチなどの韓国総菜屋が多く立地していることはご存知のとおりです。こうした実感が統計データでも裏付けできることがわかりました。
なお、飲食店における専門料理店の統計も色々と探りましたが、焼肉店や韓国料理店は、日本料理なども含めて「専門料理店」に分類されるために、面白い結果を導出することはできませんでした。細分類データが入手できれば、上記と同様な特徴が浮き彫りになると期待できます。
(取材・文/大阪産業創造館 徳田裕平)