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安全を支えるミクロの表面加工技術

2019.08.05

歯車やバネ、ピストンなど、さまざまな乗り物の部品で「表面改質」を行っているオカノブラスト。自動車はもちろん自転車、重機、農業機械、レジャーボートなど、同社の技術が活用されている分野は多岐にわたる。

同社の行う表面改質では、強度を高めて部品や製品の寿命を伸ばすことができる。例えば金属製品を製造するプレス鍛造金型の場合、同社が加工を施すことで寿命は2~10倍にまで伸びる。歯車の疲労限度は、自動車や農業機械用で1.2~2.0倍高まると言う。

代表取締役社長 岡野俊博氏

同社の表面改質は、端的に言うなら、硬い粒状の研磨材を高速で金属に噴射してぶつける技術だ。それは、原理としては刀鍛冶が金槌で刀を叩いて鍛えることと変わらない。しかし、そこから先に同社が選ばれる理由がある。まずは独自のノウハウだ。

「表面改質の対象となる金属の種類や、改質の目的はさまざまです。それによって研磨材の種類を変え、噴出の強さを変えます。試行錯誤の繰り返しなのですが、お客さまのご要望に応えたいという思いから工夫を重ねてきた結果、用途や材質に合わせたノウハウを蓄積することができました」。(岡野俊博氏)

専務取締役 岡野俊之氏

ノウハウの確立にあたっては、社内だけでなく大学や公的機関と協働し、早い時期から「産官学連携」を実践してきた。そして同社の強みが生み出された。二つ目の理由は、社内一貫体制だ。

「大阪産業技術研究所の協力を得て、測定器を独自開発しました。自分で加工したものを自分で評価することは、モチベーションを大いに高めてくれます。狙い通りにいったときは嬉しいですし、問題や課題が見つかったら、素直に受け止めて改善を行う原動力になる。外部からの測定結果を待つ必要もありませんから、納期短縮の効果は言うまでもありません。社内一貫体制は、当社の大きなこだわりのポイントです」。(岡野俊之氏)

検査は自社で行うことで外部からの測定結果を待つ必要がない。

このほかにも、小型の製品から大型の製品で、量産品から試作品までという、幅広い製品に対応できる柔軟性も同社ならではだ。

近年は、独自開発した「タフラット処理(R)」という技術が、粉体を扱う医療・食品分野から注目を集めている。耐久性に加えて素材の離型性や流動性を高めることができるこの技術は、効率的かつ衛生的に粉体を搬送できる技術として、ホッパーやふるいへの活用も進んでいる。

「お客さまの要望に真摯に向き合い、技術を磨いてきた当社の姿勢を変えることなく、新たな分野にも進んできいたい」という両氏。乗り物が鍛えた技術が、私たちの暮らしのさらに広い分野で活躍する日も近いだろう。

代表取締役社長 岡野 俊博氏(左)、専務取締役 岡野 俊之氏(右)

(取材・文/松本守永 写真/福永浩二)

株式会社オカノブラスト

代表取締役社長 岡野 俊博氏
専務取締役 岡野 俊之氏

http://www.okano-blast.co.jp

事業内容/金属の表面加工