老舗をめざすアルミホイールメーカーの挑戦
周囲の承認によって成り立つ“らしさ”より、自分を認める “個性”。“仕事”より“バランスの取れた人生”こそが大切…と、日本人の価値観は大きく変化してきた。そんな変化に株式会社ワークは新しい商機を見出している。
東大阪を拠点に40年以上の歴史を築くワークは、クルマに華やかさを添えるアルミホイールの企画・製造・卸事業を手がけているメーカーである。
「バブル崩壊の頃まではクルマを所有している事がステイタスだった。そんな追い風の時に、ユニークで剛健な製品を次々に発表したワークの知名度は一気に全国区になりました」と語る田中氏は創業者である先代の後を継ぎ、2015年に社長に就任。以降、時代にあわせた事業展開の陣頭指揮にあたっている。
チューニングカーの祭典と言われる“東京オートサロン”をはじめとするさまざまなイベントに出展するほか、WebサイトやSNSの活用にも積極的に取り組みブランドの認知をあげている。
「クルマ離れ」と言われて久しいが、最近では若い世代はアウトドアをはじめ屋外に出かけるムーブメントを生み出している。「遊び上手で個性的に生きることに貪欲な彼らに、大量生産品であるクルマに個性を加えるホイールの存在を知らせたいんです」と展望を語る田中氏の表情は明るい。
その明るさの背景にあるのは確かな技術力の存在だ。同社のホイールはレースやラリーなど過酷な環境で使用するユーザーからも信頼を得ている。ホイールはビジュアル的な華やかさを添えると同時に、クルマの走る、止まる、曲がるといった動作をコントロールする機能も持つ。
「“ものづくり企業”として、機能品質を一番にするのは当たり前ですが、先代から続くこのフィロソフィーを今の社員も受け継いでくれているのが心強いですね」と笑顔を見せる。そんな田中氏に未来の夢を聞いてみた。
「日本人には花や自然などを『愛でる』という独自の感性があります。そして、美しいものをつくる職人や企業に対する尊敬が、この国に『老舗』と呼ばれる存在を作ったと感じています。私は、老舗企業が持つ、挑戦や変化にも畏れず取り組む“攻め”の行動力に憧れています。いずれワークという会社が『老舗』と呼ばれることをめざしたい」と田中氏の挑戦から目が離せない。
(取材・文/松畑聡 写真/福永浩二)