エンジンやエアバッグを支えるゆるまないネジ
ネジは、その物理学的な性質上、時間の経過とともにどうしても緩んでしまうものだ。こうした特性を考え、緩まないように考案された手法、製品は数多くある。その中でも最も強度が高いとされるのが、ネジ部に接着剤を塗布してから固着させる方法だ。
トーブツテクノは、接着液をネジ部にあらかじめ塗布するプレコート加工を30年手がけてきた。液には、内部に接着剤を含んだ直径20~150ミクロンのマイクロカプセルが無数に含まれており、ネジを締めたときにカプセルが破れて中の接着剤がにじみ出て固着する仕組みだ。
「自動車1台に約5千本のネジが使われていますが、その中でも特に強度が必要な約150本のネジについてはプレコート型が使われていると言われています」と谷氏。同社製のプレコート型ネジは自動車のエンジン回りやエアバッグなどの重要部品にも使われているという。
当初、接着剤として採用していたのは高強度の接着力を持つエポキシ樹脂系のみだったが、その後用途に合わせて中強度のアクリル樹脂系、低強度のナイロン樹脂系なども採用を進めてきた。
また、緩めては締め直すことのできる樹脂融着タイプの塗布も行い、企業からのさまざまなニーズに対応している。緩み止めのほか、止水性の効果もあり、住宅業界にも多く採用されている。
工場に入ると大小さまざまなネジがケースに整列して置かれ、塗布されるのを待っている。寝かせながら転がしたネジ部に液を塗布し、乾燥及び画像検査まで行う全自動工程と、頭の部分を引っ掛けて吊り下げ、接着液で満たされた液槽の中に浸漬して塗布する手動工程の2つがある。
いずれの工程も、ネジの径に合わせて粘度をあらかじめ調合して最適な接着力にしてから塗布工程に移る。「工程においても塗る幅の長さによって接着力の強弱を変えることができ、顧客の用途に応じながら最適な提案を行っています」と谷氏。
塗布し終えたネジは乾燥させた後、締め付け具合や膜厚を測定器でチェックをしている。いかに早く、いかに品質を安定させるかを考えながら、1日に45万本のネジが出荷されていく。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)