軽くて丈夫、強化ダンボールを素材にものづくり
「人が乗ってもびくともしませんよ」。そう言って住谷氏が差し出した組み立て式テーブルは強化ダンボールでできている。切り込みを入れた二つの長方形パーツを組み交わせて土台とし、その上に天板をはめ込むだけ。重量は同じ大きさのアルミ製テーブルと比べて約半分の400gという軽さだ。
インクジェットプリンターを使って多彩な柄が楽しめるようにもしている。「撥水加工もしているので雨が降っても大丈夫。登山やキャンプ用に気軽に携帯できると重宝がられています」。
強化ダンボールは、中芯を2層もしくは3層重ね、ライナーと呼ばれるパルプ100%の硬質紙で挟んだ構造で、1㎥の箱なら3t分の重量物を運べる耐荷重を持つ。
京阪紙工では創業来、梱包材としてこの強化ダンボールをさまざまなメーカーに供給してきたが、住谷氏は軽くて強い素材としての特性に着目し、これまでに10の強化ダンボール製品を送り出している。
第1号は「簡易トイレ」で東日本大震災後に商品化。「阪神・淡路大震災の時に女子高生がダンボール製の仮設トイレを作った話を覚えていて、強化ダンボールなら頑丈なものが作れる」と発案した。使うのは3つのパーツだけ。避難所での備蓄用品などとしてすでに2000個が出荷された。
元々ものづくりが好きだったという住谷氏。さまざまな梱包のニーズに応えてきた経験がものづくりにも生かされている。構造を考える上でのポイントは、「だれでも直感的に組み立てることができ、コンパクトに収納できるようにすること」。
3年前にカッティングマシンを導入してからはパーツ作りが格段にスピードアップし、さらに制作意欲を掻き立てられている。
今回、紙加工技術展に出展するのは、その上に乗って体を折り曲げ、ひざ裏を伸ばす健康器具、「ストレッチボード」。2種類の直角三角形のパーツを使って角度調整でき、使わないときは本棚に収納できるようにした。
昨年の紙加工技術展に来場した女性から、筋肉が衰える病気で自分の体を支えられない子どものために、食事などの時に体を固定し、かつ持ち運べるイスを作れないかとの依頼が舞い込んだ。これまでに7回の試作を重ね、背もたれの調整では「ストレッチボード」で思いついた直角三角形パーツのアイデアが生かされた。
モットーは「売れそうな商品を作るのではなく、本当に求められている商品を作ること」。100アイテムを商品化することが目標だ。
(取材・文/山口裕史)
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