商売にシビアな関西の土壌がビジネスを育てる
お気に入りのレストランで食事をすることで、支払った料金の一部がNPO団体などに寄付されるというGochisoの仕組み。
気軽に社会貢献活動に参加できるこの仕組みを考案し、運営の最前線に立つニュエン氏は、ベトナム生まれのアメリカ育ち。京都大学大学院で地域環境科学の博士号を取得し、大学院修了時の2016年にGochisoを設立した。
「京都大学在籍中に、教育関係のNPO設立に向けて活動していました。しかし、資金集めに苦戦して断念。そのとき、『NPOを支援するビジネスこそが求められているのでは』と感じたことが、Gochisoへとつながっていきました」。
このビジネスを立ち上げるにあたり、ニュエン氏にとって、日本はチャンスに満ちた国に見えたという。その理由はまず、日本にはもともと助け合いや地域活動、リサイクルなど、社会貢献に通じる意識が定着していたことだ。
2つ目の理由は、そのような土壌がありながらも、「寄付をする」という行為はまだ浸透していなかったこと。欧米では一般化している行為は、近い将来に必ず日本でも定着するとニュエン氏は考えた。
「同じことをアメリカでしようとしても、すでに競合はたくさんいます。日本は未開拓な上、ポテンシャルの高い市場だと言えるのです」。
京都で学んだニュエン氏にとって、関西は馴染みが深い上に人脈も築けており、起業の場所として選ぶのは自然な流れだった。
また、東京に比べて家賃や人件費、物価が安いことも大阪での起業を後押しした。さらに、「関西ならでは」とも言えそうなメリットを感じている。
「関西人は商売に厳しいです。商品やサービスに対しても率直に、ときにシビアな意見をどんどん言ってくれる。これは、ビジネスのブラッシュアップが必要な、スタートアップ期の会社にとっては非常にありがたいこと。大阪でビジネスを鍛えたら、日本のどこに持っていっても大丈夫だと思います」。
今年はモバイルアプリの開発に着手し、利便性を拡大させることでユーザー数の拡大と、それに伴う加盟レストランやNPO団体の拡大に取り組んでいくというニュエン氏。日本での起業経験を踏まえ、日本人と外国人の両者へアドバイスをもらった。
「日本人は、ぜひ、視野を広げて海外に目を向けてください。海外企業とのコラボや、外国人留学生の採用は、きっと素晴らしい価値をもたらしてくれるはずです。日本での起業を考える外国人は、相談に乗ってもらえたりアドバイスをしてもらえる“メンター”を見つけてください。そのためにも、どんどん外に出て、たくさんの人と会ってください。諦めなければ目標にたどり着けますよ」。
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(取材・文/松本守永 写真/福永浩二)