カナダと日本、夫婦だからこそできた翻訳サービス

外国語で文章を書く能力が問われる翻訳会社だが経営者の大半は日本人で、ボーディン氏のように日本で翻訳会社を創業した外国人はめずらしい。ビジネスで相手にするのは日本の企業であり日本語の堪能さも求められることを考えれば無理もない。

そのハンディキャップを補ってきたのが妻の明子氏だ。創業から22年。二人三脚で社員55人、大阪府下の翻訳会社で3番目の規模にまで育てあげた。

カナダで沿岸警備隊の仕事に従事していたボーディン氏が大阪に住むカナダ人の友人に誘われ来日したのは1989年のこと。北極海が凍り付く半年間は警備隊の仕事がないため、そのまま大阪にとどまりフリーで翻訳の仕事に就いた。

だが貯金はすぐに底を突く。カナダの自宅を売却してまでこだわったのは日本での仕事だった。「カナダに戻るより、外国人だからこそできるビジネスの可能性にかけた」。

その後、翻訳会社に入社し、そこで企画・制作を担当していた明子氏(現取締役)と出会い、結婚。親会社のリストラで翻訳会社は整理されることになったが「顧客ごと持って行っていい」との計らいで、デザインやDTPを担当する他の3人の社員とともに会社を立ち上げた。

取締役 中村 明子氏

翻訳だけでなくパンフレットなどの完成物までを作成できる強みが重宝がられ、明子氏の営業力、提案力を武器に順調に取引先は増えていった。一方で、WEBやプログラムに強いボーディン氏が独学でこれを習得し、増加するホームページ作成のニーズに応えた。

また、創業当初から依頼のあった英語以外のドイツ語、スペイン語の翻訳については当初日本在住の外国人に発注をしていたが「言葉は生き物。ネイティブと言えども母国を離れると翻訳の力は衰える」との考えから、言語ごとに現地のパートナーと契約して翻訳、校正作業を委託、質を担保してきた。

リーマンショックの翌年は売上げが25%ダウンした。仕事の幅を広げるべく、観光業向けの仕事を開拓し、飲食店向けに多言語メニューの作成を支援するオンラインサービスがインバウンドの増加で実を結んでいる。

また、ボーディン氏が世界中から探し集めた多言語情報発信の効率化を支援するソフトの代理店サービスも好調だ。「多言語社会の欧米は翻訳関連ソフトも充実している。スピードやコストダウンを求める企業からのニーズに応えていきたい」。

「9割の日本語はわかるが、1割わからないストレスは大きい。侍のように強い明子に助けられている」とおどけるボーディン氏の横で、「強さを受け入れるトッドがいてこそ」と朗らかに笑う明子氏との絶妙のコンビネーションが同社の成長を支えている。

代表取締役社長 Tod Baudin氏

>>>外国人経営者のメリット
ストレスなく海外の情報収集が可能。

>>>外国人経営者のデメリット
長時間労働をいとわない日本人の労働観が相容れない。

 
(取材・文/山口裕史 写真/内山光)

2019年04月09日
アイ・ディー・エー株式会社
代表取締役社長 Tod Baudin氏
取締役 中村 明子氏
事業内容/多言語翻訳とそれにかかわるコンテンツ作成・管理

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