《講演録》起業最前線!! 日本と大阪の起業を取り巻く環境の変化と成功する起業家のポイントは!?
>>> カオスの旅に必要なのは“Who am I ?”を繰り返すこと
企業の新規事業開発を分析した『イノベーションの理由』という本には、事業創造や起業で重要なのは起業家固有の理由、つまり個人の覚悟や執念だと書かれています。残念ながら、合理的な成功法則はありません。
起業を考えるとき、まずは「自分のやりたいこと」「自分にできること」から探しますよね。なぜなら、続けることができるからです。でも、そうすると大抵儲からない。儲かるほうにいくと、今度は意欲がなくなってしまう。
私は大手企業でエース級と言われた人や海外でMBAを取得した人など、いろんな起業家を教育してきましたが、どんなに優秀な人でもこの状態を2〜3年ぐるぐる繰り返し、カオスの旅に出ます。私もそうでした(笑)。
この混沌とした時期に、起業家に必要なのはリフレクションです。「自分は何のために生きてきたんだろう」「自分は何を知っているんだろう」「自分は誰を知っているんだろう」。“Who am I ?”これを繰り返すことがとても大事なんです。
現代の経済環境は、変動的で不確実で曖昧だと言われています。市場が不確実なのだから、自分の内なる声を聞かなくてはいけない。結局、このもやもやした環境を耐えた人が勝ち抜けていきます。
>>> 成功する優秀な起業家には、いいメンターがついている
成功する優秀な起業家には、いいメンター(指導者・助言者)がついていると言われます。アップル創設者のスティーブ・ジョブズのメンターは、アメリカンフットボールの元コーチや日本人の禅宗僧侶などさまざま。また、スティーブ・ジョブズはフェイスブック創業者・ザッカーバーグのメンターでした。
我々アクセラレーターは、いいメンターをコミュニティに巻き込んで起業家と対話させる必要があります。そして “Who am I ?”を問いかけ続け、インスピレーションを得ることが、アップルのiPhoneがそうだったように、世界観や市場までも創造するのです。
>>> 幸運を呼びこむ偶然や、不確実なものもコントロールできる
起業家コミュニティでは、「運をつかむ力は大事だ」とよく言います。近年では、人類が生き残ってきた理由は偶然の積み重ねだという説も。
成功者にとって重要なのは「才能」か「運」かという研究をしているイタリアの学者は、運のいい人が成功するという結果を発表しています。松下幸之助も「成功するかどうかは90%が運だ」と言っていますね。
では、どうやって幸運を呼び込むか。スタンフォード大学の教授によると、「誰にも未来は予測できないが、偶然は仕掛けられる」とのこと。好奇心をもって、あきらめず、楽観的で、失敗を恐れず、柔軟性を意識して行動すればです。
サラス・サラスバシーというバージニア大学の教授は、「成功する起業家は合理的な計画を立てない。答えのない時代において行動しながらデザインする」と言っています。手に入る資源からとりかかる。許容可能な損失を把握する。パートナーを探す。そして失敗を糧にできれば、不確実なものもある程度コントロールできるということです。
>>> 実行の伴わないアイデアは無価値。まずは行動すること!
我々は8年間起業支援を行なってきましたが、「合理的な事業計画をどんなにうまく立てても意味がなく、成功確率は変わらない」と痛感しています。
ベンチャーキャピタリストのデービッド・ローズ曰く、「実行の伴わないアイデアは無価値」です。スタートアップの世界で、アイデアを出し惜しみすると大抵うまくいきません。早く見せて、早く行動するというのが鉄則です。
成功するパターンは、素早く行動を起こしている場合。たくさん失敗しても、優秀な起業家はそれを適切なプロセスだと受けとめています。
起業をお考えのみなさん、失敗を恐れずにまずは行動してください。私の話が、みなさんの一歩前進につながれば幸いです。
(文/花谷知子)
株式会社ゼロワンブースター 代表取締役社長 鈴木 規文氏
99年カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、管理部門を統括するコーポレート管理室。東証マザース上場、東証1部指定替えプロジェクトメンバー。06年エムアウトにおいてアフタースクール事業「キッズベースキャンプ」を創業するとともに、兼務で新規事業開発シニアディレクターを歴任。同事業を東急電鉄に売却、3年間のPMIを経て、同社取締役退任後、11年事業創造アクセラレーター01Boosterを創業し、起業家支援、企業向け新規事業開発支援事業を行っている。
2009年グロービス経営大学院アルムナイアワード受賞。https://01booster.co.jp/