≪講演録≫若き女性起業家の想いが切り拓いた「伝統産業×赤ちゃん・子ども」の市場
《講演録》2016年9月30日(金)開催 創業スペシャルセミナー
若き女性起業家の想いが切り拓いた「伝統産業×赤ちゃん・子ども」の市場
株式会社和える 代表取締役 矢島 里佳 氏
日本全国の職人とともに伝統産業の技術を活かしたオリジナル商品を企画し販売する「0から6歳の伝統ブランドaeru」を展開する、株式会社和える。若き女性起業家・矢島里佳氏が学生時代に設立し、今年6年目を迎える注目企業だ。創業以来、独自の柔らかな感性で「日本の伝統を次世代につなぐ」仕組みづくりに取り組み、全国にaeruファンを増やしている。
大学4年生で創業。「和えるくん」を育てる運命を享受
「和える」は、お料理の和え物の和えると同じ意味です。日本の伝統や先人の智慧と、今を生きる私たちの感性や感覚を和えることで、次世代により魅力的な日本を伝えていきたい。そんな想いをこの社名に込めました。
私は、「和える」を自分の息子だと思っています。起業家をめざしていたわけではなかったのですが、結果的に自分で仕事をつくるという選択をしたとき、それは新しい生命である「和えるくん」を育てることなのだと思いました。生きていくことと働くことが、自然に一体化していくような感覚で創業しました。2011年3月16日、大学4年生のときです。
「和える」は矢島里佳の所有物ではなく、「和えるくん」という一人の人格。この子を育てていく仲間が社員で、社員のことは和えるくんの「お兄さん」「お姉さん」と位置づけています。和えるくんがどんなことをしたいのかに常に耳を傾け、この子がなぜ生まれてきたのかということを、まだ5才のこの子の代わりに伝えること。それが、いまの私の仕事です。
日本の伝統産業と赤ちゃん・子どもを結びつける
全国各地を訪れると「うちの地域には何もないよ」とおっしゃる方が多いと感じます。けれども、そういった地域では、必ずいいなと思う宝物が見つかるのです。「なんでもあるよ、便利だよ」という地域のほうが、一体何があるのだろうと思うことが多いかもしれません。
日本ならではのものを生み出し守ってきた先人の智慧に出会う機会が減少している今、赤ちゃんや子どものときから日本の文化や伝統に触れる機会が多くあれば、大人になってからも文化や伝統を選択肢の一つとして捉えることができます。一方、伝統産業の職人さんたちは、ライフスタイルの急激な変化についていけず、何をつくれば社会の役に立てるのだろうかと悩んでいる。
「伝統産業」と「赤ちゃん・子ども」。一見、結びつきにくいような組み合わせでも、それぞれの魅力と足りないところが和えられると、お互いに必要としあっていたことがわかり、新たな市場を生み出すことができたのだと思います。これが、和えるくんが最初に立ち上げた「0から6歳の伝統ブランドaeru」事業でした。