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ものづくりベンチャーとして身を立てる、 しんどい時を支えたのは 「ただがむしゃら」な気持ち

2016.07.08

ショールーム

どんな事業で起業するかを考えたとき、ものづくりを選ぶ人がどれだけいるだろうか。ハードルを上げているのは初期投資額と販路の開拓だ。

辻野氏が第1号商品として市場に送り出した、簡易型ジャグジー「バブルスパ」は金型の投資だけで数百万円を要した。最初の商品で失敗すれば後がない。そこで、大手が手を出さないニッチな市場を狙って参入した。

バブルスパ イメージ
 

さらに「自分たちが開発した商品への思いが消費者やバイヤーにまでしっかり伝わるように」と卸を介さず、小売店との直取引にこだわった。

「当時の僕が持っていたのは何の根拠もない自信とがむしゃらさだけ(笑)」。

起業から3年間、朝7時から深夜0時まで1日も休まずに働き続けた。起業当初に800万円あった通帳の額はほぼ底をつきかけていたが、「前に進むしかなかった」。バブルスパの発売直後、手応えは乏しかったが、店頭で自ら水槽を使って実演販売をすると口コミで火が付いた。

プラスチック成型の町工場を営んでいた両親の背中を見て育った。だが家業の工場は海外工場との競争に敗れ廃業した。息子の起業を聞いて母は「同じ苦労をさせたくない」と猛反対したが、父は「自分がやりたいことを」と背中を押してくれた。

第1号商品以降も「自分たちがほしいと思えるものを創る」という開発コンセプトにこだわり、インテリア性の高い加湿器や空気洗浄機などを市場に送り出し続けた。

水で空気を洗う新しい発想の空気洗浄機「NAGOMI(ナゴミ)」シリーズは累計200万台以上を出荷した。超音波加湿器のカテゴリでは市場のシェアを大きく占めるまでに成長した。

空気洗浄機「NAGOMI」 シリーズ第一弾商品
 

将来の展望は「国内はもとより、世界規模でスリーアップが認知されるようにグローバルで勝負していきたい」。今年からはプロモーションも強化し、欧米市場での販売も見据える。

「ベンチャーと名乗る以上、イノベーションを起こしたい。社会の課題をデザインで変えられるものづくりにも挑みたい」と力を込める。

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▲代表取締役社長 辻野 真介氏

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

スリーアップ株式会社

代表取締役社長

辻野 真介氏

http://www.three-up.co.jp/

事業内容/家電製品の企画・開発・販売