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廃棄されるもみ殻由来シリカで機能性素材を開発

2025.04.14

紳士・婦人カジュアルウエアを主にODMで供給してきた東光リミー株式会社は、2019年から機能性が高い商品の販売に本腰を入れ始めた。「普通の生地で服を製造しているだけでは特色が出せず、値段だけでの勝負になってしまう。付加価値のある加工で“うちらしさ”を出したいと考えた」と営業部主事の前川氏は語る。

その第一弾として商品化したのが、熱伝導性の高い金属鉱石を主原料に数種類の鉱石粉体をブレンドして生地表面にプリント加工を施し、放熱・遮熱機能を持たせた冷感素材だ。生地の内側で発する人体の熱を遠赤外線エネルギーに変換し大気中に放熱する一方で、外側からの太陽光に含まれる遠赤外線エネルギーについては、同じ周波数帯の遠赤外線を放射することで相殺し、遮熱する。「猛暑対策として普及している接触冷感加工に比べ、常に放熱・遮熱をし続けるため、冷感を持続できる点が特長」と熱中症予防指導士の資格も取得し開発に当たった佐藤氏。同素材は、ゴルフや釣りなどのアウトドアスポーツ、ならびにインナーウエア向けの猛暑対策素材として着実に売上げを伸ばしている。

この実績をもとに現在開発を進めているのが、稲のもみ殻由来のシリカを用いた機能性素材だ。鉱石粉体を使うのと原理は同じだが、従来は廃棄されていたもみ殻を利用することでサステナブル性を加えた。「鉱石粉体とは素材が異なるため、プリント加工しやすくするための材料の配合に苦労した」と話すのは開発を担当した杉野氏。もみ殻由来シリカを主原料にしながら鉱石粉体も混ぜることで、紫外線を反射する効果も加えた。検証結果では未加工素材に比べ2℃ほど空間温度を下げることが確認できたという。想定用途としてはテントなどの資材向けが中心であり、日傘向け素材の開発も進めている。また、杉野氏が文献を調べていたところ、もみ殻由来のシリカには無数の細かい孔(あな)があり、消臭効果を有することも判明したことから、インナー向けなどにも用途を広げようと考えている。

機能性繊維フェアでは、「新たな用途開発や顧客開拓だけでなく、機能性やコストダウンにつながる加工方法を持つ協業先とのマッチングを期待している」と前川氏。R&D事業部の社員は、日頃からアパレル以外の機能性素材に関する展示会などにも足を運び、新しい機能や用途などに常にアンテナを張っているという。「これまで蓄積した開発のノウハウを活かして、さまざまな機能性素材を市場に出していくことができれば」と佐藤氏は今後の展望を示した。

左から杉野 有理氏、前川 徹氏、佐藤 有美香氏、駒瀬 裕美氏

(取材・文/山口裕史)

東光リミー株式会社(東光商事グループ)

営業26部 主事

前川 徹氏

http://www.tokoshoji.co.jp/limy

東光商事株式会社
R&D事業部 課長 佐藤 有美香氏
主任 杉野 有理氏
駒瀬 裕美氏
事業内容/紳士、婦人向けウエアの企画・開発・製造