「すべての数字を見える化」は生き残るための改革
創業約50年の自社を「100年続く会社にしたい」と、強いリーダーシップで社内改革を断行している次期三代目社長、野村功勇氏。
父親が経営する鋼材の加工・販売会社に入社したのが5年前。営業、加工現場を経験する中で「このままでは時代の変化に対応できない」と危機感を抱く。
現社長から舵取りを任された野村氏が取り組んだのは、「すべての数字を社内に公表」「現場と営業のジョブローテーション」の2大改革。これまで社長・役員しか知らなかった売上や利益を全社員で共有し、さらには荷送の量と走行距離から機械の稼働状況、営業一人ひとりの稼いだ粗利まで、徹底した情報公開に踏み切った。
狙いは、社員の仕事ぶりを客観的にオープンに評価することと、状況に応じて業務の配置換えのきく少数精鋭主義の徹底。しかし、「鉄屋には鉄屋のやり方がある」と社内から反対の声があがる。トン単位での商いが常識の鋼材販売に、数キロ単位のネット販売を導入したことも、ベテランの社員たちの拒否感を強めた。
しかし、そんな「逆境」に折れなかったのは、「社員と家族の生活を守らなければ」という経営者としての使命感。この業界は日本の製造業の黄金時代に出来上がった流通の構造が今も続いている。今後は国際的な競争力と、より柔軟なユーザー対応力を身につけないと生き残れない。
「改革がなぜ必要なのかを伝えるため、時には一対一で食事をしながら、根気良く社員と話し合いました」と野村氏。改革は現在進行形だが、数字の見える化による原価意識、異なる持ち場の仕事を理解し合うことでの団結力が共に高まり、成果は着実にあがっている。
▲朝礼の様子
▲事業のさまざまな数字を、社員全員に公開。
(文・写真/山蔭ヒラク)
東邦鋼業株式会社
専務取締役
野村 功勇氏
設立/1970年 資本金/4,000万円 事業内容/鋼材の加工販売。3機のスリッターを駆使した、小ロット・短納期が強み。自動車、住宅、医療などユーザーの裾野は広く、鉄のニッチ市場で日本一をめざす。