押出成形に「金・時間惜しまず」
オフィス家具、自動車、水回りなど、私たちの日常生活を支える樹脂製品の押出成形を行うのが大淀化成工業株式会社(大阪市東成区)だ。
樹脂成形の基本的な手法の一つとして知られる押出成形(加熱した原料を加圧し型に通すことで一定の断面形状を持つ製品を製造する方法)。だが、緻密な技術力が必要なことから、同じく基本的な手法とされる射出成形(加熱溶融させた材料を金型内に射出注入し冷却・固化させることで成形品を得る方法)を生業とする企業数と比べて200分の1程度しかないといわれている。
また同じ押出成形でも会社によって得意とする素材や成形技術はさまざま。同社が得意とする軟質材の押出成形は硬質材に比べて難しく、競合はさらに少ないという。
近年はコンパクトカーブーム、および医療・介護分野の市場拡大が追い風となり、大手メーカーからの安定的な受注も合わせて業績を拡大している。
これまで手掛けた案件は4000件以上。例えば、0・2ミリの肉厚に仕上げた床と壁に密着させる建築用のパッキンの曲げ部分。また、材質の反発弾性を考慮して硬度を調節することで優れた装着性を実現する窓フレーム用のキャップ。さらには、スジ一本入らない滑らかな表面のテーブルのエッジ部材。顧客からはこれら解決策に窮する「難しい相談」が寄せられるが、「受けた仕事に金・時間は惜しまない」という社長の姿勢が、技術者の育成や同社の開発・提案力に結びついている。
創業は1964年。現会長の山木林三氏が始めた樹脂製品を扱う商社だ。もともと技術者であったことから創業後数年で押出成形加工業へと展開した。汎用性の高さから建材、雑貨、自動車、電子機器など分野を問わず活用用途が広がる樹脂素材だが、同社にとって販路拡大が大きな目標となっている。
2009年に2代目社長に就任した山木祥平氏はWEB広告を活用したり、地元の工業会に参加したりして得た人脈を通して案件を獲得するなど、営業活動に積極的だ。昨年には展示会にも初めて出展。「自ら動く」ことで多数の受注につなげている。
また、ここ数年は労災や設備保全、リーダーシップなど社員のニーズに応じて学びの機会も積極的に提供しており、セミナー・研修への参加を促している。
平均年齢40歳と脂の乗った従業員とともに、業界を問わず新規参入をめざす山木氏の挑戦が、私たちの生活を支えてくれるだろう。
(大阪産業創造館 プランナー 坂田聡司朗)
▲空調用異形部材の断面寸法を検査しているところ=大阪市の大淀化成工業