【ロングインタビュー】「よそとちゃうこと」で次の一手 「社員が自分で考える風土」を
小さな会社だからこそ、ユニークであれ。そんな思いを「よそとちゃうことせなあかん」という家訓に託し、成長を続ける木村アルミ箔。アルミやフィルム製の惣菜用料理カップを主力として、海苔や昆布でできた「食べられる料理カップ」など、それまでにない製品を世に送り出してきた。新しいことに挑み続ける企業風土はいかにして醸成されるのか、その秘密を聞いた。
>>>「よそとちゃうことせなあかん」が、御社の家訓だそうですね
創業者である祖父は常に新しいことを取り入れる人で、「よそとちゃうことせなあかん」が口癖でした。それがそのまま、当社の経営理念になっています。先代社長である父も、同じく創意工夫の人。長屋の一角をアルミ箔の裁断工場にしていたのですが、その片隅に、どこで手に入れたのか、アルミを成型してマドレーヌ用カップをつくる装置を置いていました。その機械を改良し、製品として売り出すようになったのが「アルミ製料理カップ」です。それまではアルミ箔を裁断して卸す問屋だったので、自社で製品化することで、メーカーとして歩みはじめました。
>>>木村社長が入社された頃は、どのような社内体制だったのでしょうか
大学を卒業して5年後、家業に戻りました。社員は7名で典型的な家族経営。製品加工の仕方から伝票の書き方まで、仕事のやり方はすべて社長の頭の中にだけある状態です。仕事の進め方やルールを会社としてきちんと決めた方がいい。そう思い、「出入り帳」という、今でいうマニュアルを作ったのですが、社長の「無駄や」という一言で終了。事業承継の教育はまったくなかったですね。しかし、仕事への姿勢、1円まで合わせる、無駄をなくすということに関しては、背中を見ながら大いに学ばせてもらいました。
>>>御社の人材教育、仕事の標準化の原点についてお聞かせください
一台の成型機から始めましたが、次第に受注が増え、機械も人も増やして生産するようになりました。そんな折、製造現場の職人さんが辞めてしまったんです。現場で生産するパートさんに命令口調で接するものだから、それが不和の原因となって。
そこで、入社したばかりの22歳の若手社員をパートさんたちに教えを請いに行かせました。現場で実際に作業するパートさんは仕事の中身をよくわかっている。若手社員には「パートさんには敬語をつかえ」と教えました。すると、パートさんたちも一層がんばってくれて、どんどんよくなっていった。これが当社の人材教育の原点かもしれません。生産の手順に関しても、機械を調整しながらいろいろと試してはプロセスを記録し、改良を加えていきました。これが業務標準化のはじまりですね。
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