【ロングインタビュー】絶対的な安定はない。なにがなんでもつぶれない会社に。
2013年9月に、ローカロリー&ヘルシーフードを提供するカフェ「+medi(プラスメディ)」を道修町にオープンしたのを皮切りに、関西エリアの百貨店を中心にレストランやテイクアウトショップを展開しているインクロムプラス。治験支援事業を手掛ける会社の新事業としてスタートした飲食事業の狙いと戦略を、金田仁二郎社長に聞いた。
>>> もともとは治験の会社なんですね。
日本で初めて治験、すなわち医薬品の開発を支援する会社としてスタートしました。医薬品開発は、基礎研究の後に動物で試験を行う非臨床 試験をした後、ヒトで安全性、有効性を確認するための臨床試験、すなわち治験を行います。この治験をサポートしています。フェーズ1と呼ばれる、少数の健康な成人に対する試験では、学生の方などにご参加してもらい、何日か寝泊りしながら開発中の医薬品を飲んでもらい、有効な量や薬の体内への吸収・分布・代謝・排泄などを調べています。
またフェーズ2では少数の患者さんに、フェーズ3では多数の患者さんに医薬品を飲んでいただき、安全性や有効性を調べます。治験を行う場として、われわれは日本で初めて治験に特化した病院も開設しています。350名のスタッフのうち7割を医師、看護師、薬剤師などの医療従事者が占めています。実際に開発を支援しているのは糖尿病などをはじめとする生活習慣病や花粉症などの薬などが多いですね。
>>> なぜ飲食業界に。
生活習慣病の専門家がそろっており、生活習慣病の情報を発信するWebサイト の運営なども手がけています。そのなかでさまざまなノウハウが蓄積し、知れば知るほど生活習慣病は食事と運動で予防できるということを痛感するようになっていました。そこで、そのうちの一つの食事で事業を展開しようと考えました。
もう一つ治験に関するイメージを変えたいという思いもあります。治験はともすれば人体実験というとらえ方をする方もあり、われわれも努めて情報発信を行ってきましたが、被験者募集業者 のレベルも玉石混交というのが実態です。そういうイメージを覆すために、飲食業でブランドを構築し、治験もしっかり、安全にやっている会社なんだというとらえ方をしてもらえたらうれしいなと思っています。
治験業界は比較的安定しているし利益率も高いビジネスです。しかし、絶対に安定なビジネスかというと、規制が変わる可能性もあり、予断は許しません。何があってもつぶれない会社にしようという思いから第2の事業の柱を作ることにしました。医と食はいずれも絶対になくなることのないものですし、この組み合わせならチャンスはあると思いました。
>>> 健康食品という言葉もいろいろなとらえかたをされます。その中でどのような商品開発を考えているのでしょうか。
まず本当に健康を考えた商品をつくろうということです。メニューはすべて管理栄養士が考えており、栄養素を徹底的に管理する一方で、惣菜やスイーツも80kcal~とカロリーを抑えています。カロリーを抑えるために、大豆で作った肉の代替品であるグルテンミートを使ったり、生クリームを豆乳に置き換えるなどしてお弁当も500kcal、ショートケーキも150kcalの商品を開発しています。長年の歴史の中で蓄積された英知も大切にしています。たとえば、地産地消や季節の旬のものを素材に使うということです。今後はエビデンス、つまり科学的根拠も提示していきたいと思っています。開発した商品を100人の方に1カ月間食べていただき、体重、脂肪、血糖値がどう変わるのかをしっかり調べ、学会でも発表しようと考えています。
併せて健康に関する情報を整理して発信していきます。医師でも「どんな食事をすればいいのか」という意見はさまざまです。われわれはそれらの情報をしっかりと整理することで、情報を受け取る方が判断できる材料を提供しようと思っています。
次ページ >>> 医療業界から飲食業界へ。