治験で培ったノウハウで飲食事業へ
「健康食品」という言葉を額面どおりに受け取る人はもはや少ないだろう。玉石混淆の中からいったい何を選べばよいのか。その答えをビジネスで提示しようとしているのがインクロムプラスだ。
母体となるインクロムは1983年以来、研究開発段階にある医薬品を健康な人や患者で試し、副作用や有効性を確かめる治験支援事業を手がけてきた。その中で培ったノウハウを活用し、昨年、別会社としてインクロムプラスを立ち上げ飲食事業に進出。「治験の中でも私たちが得意としてきた生活習慣病領域は運動と食事でかなり予防できることがわかっている。これに、地産地消や旬の食材が体によいといった人間の英知も取り入れ、商品開発をしている」と金田氏。
治験に携わった管理栄養士も加わりメニューを考え、大豆で作った肉の代替品を使ったり、生クリームを豆乳に置き換えるなどして500kcalのお弁当、150kcalのショートケーキなどを開発。昨年9月に「+medi(プラスメディ)」を製薬企業が集積する大阪・道修町にオープンしたのを皮切りに、関西エリアの百貨店を中心にレストランやテイクアウトショップを展開している。
治験支援事業で安定的に収益を確保できている中で、あえて他業種への初進出という、リスクにもなり得る挑戦に踏み切ったことについて「何をしていても絶対的な安定はない。めざすのは、何があってもつぶれない会社。何があってもなくならない医と食の組み合わせならまだまだ可能性があると考えた」と金田氏。「ルールで決まったことをきっちりやる」治験と異なり柔軟な発想が求められる業界だが、若い社員にどんどん任せ、カレーやスムージーの専門ショップ展開も視野に入れる。「今後はうちの商品を食べてもらい、どれだけ血糖値、体脂肪などの変化があったかをまとめ、学会でも発表していきたい」。めざすのは科学的根拠に基づいた食品の開発だ。
紙面では紹介しきれなかったロングインタビューはコチラ
「絶対的な安定はない。なにがなんでもつぶれない会社に。」
https://bplatz.sansokan.jp/archives/3076
関西学院大学 経済学部 2回生 近澤 征司さん
治験とは全く別の業界である飲食業に進出されたことに大変驚きました。
でも治験支援事業で積み重ねてきた膨大なデータをもとに、裏付けのある健康食が提供できるという強みを活かして、病院などにレストランを出店するというビジネスモデルに「なるほど!」と感心してしまいました。最初は緊張していたんですが、ユーモア溢れる金田社長のおかげで緊張感が和らぎ、楽しく取材させてもらいました。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)