マークするのは「他の世界の最先端」
後方を走る車のドライバーにその存在を知らせるためにある自転車の赤いアクリル樹脂製の反リフレクター射板。安全を守るために求められる精度は厳しく、車のヘッドライトが100メートル先を走る自転車の反射板に当たって跳ね返ってくる光がドライバーの目をとらえる必要がある。その反射角はわずか0.2度。このリフレクターで4割の世界シェアを誇るのがキャットアイだ。
秘密は細かなプリズムの集合体を生み出すためのピンを使った金型の製造技術と、水を吸収しやすいアクリル樹脂の特性を踏まえた成型方法にある。反射面の汚れや水滴は反射光を阻むため、これらを防ぐために樹脂に機能性も加えなければならない。「とても奥深い世界です」と津山氏は言う。
1957年に、創業者が当時の日本では最先端素材であったアクリル樹脂にいち早く目をつけ、それまでのガラス製から置き換えたリフレクターの製造を開始。拡大する国内マーケットの獲得に血眼になる同業者をよそに輸出市場にも目をつけた。
自転車は国ごとに規格が異なる。最も厳しいアメリカの規格をクリアしたのを契機に多くの国の規格を取得。完成車メーカーから、キャットアイに頼めば国内も輸出も窓口は一つで済む、と重宝がられシェアを伸ばしていくことになる。
反射板以外の自転車付属品にも手を広げた。その際意識したのは「常に他の世界を見て最先端を取り入れること」。1981年にトヨタが国産車で初めてデジタルスピードメータを採用するや、速度や走行距離などのデータをデジタル表示するサイクロコンピュータの製造を開始。1982年にバッテリーランプの製造を始めて以降は、小型ハロゲン電球、白色LEDなどが世に出されるたびにバッテリーライトへ転用していずれも世界初の商品化を成し遂げた。
あらゆる自転車付属品を扱う“八百屋”をめざしたこともあったが、「このままではブランドがぼやける」と、1990年代以降は「安全、健康、環境」のキーワードに特化。製品もリフレクター、サイクロコンピュータ、バッテリーランプに絞った。
今もLEDと太陽光電池を組み合わせた発光式リフレクターやスマホと連動したサイクロコンピュータなど時代の潮流を追いながらの商品化で先頭を走り続ける。
▲差別化のカギを握るリフレクターの金型。リフレクターは国内生産にこだわっている。
▲太陽光で充電が可能なリフレクター。
▲大画面のサイクロコンピュータ。大きな文字表示にシンプルな操作で扱いやすい。
▲代表取締役社長 津山 晃一氏(左)とマーケティング部 高浦 克樹氏(右)
▼【ロングインタビュー】性能、精度・・・ 常にめざすのはグローバルスタンダード
https://bplatz.sansokan.jp/archives/1956