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フードロスを削減、不揃い野菜がスムージーでよみがえる

2025.10.31

農家から不揃いの農産物を買い取り、ジェラートに加工・販売する株式会社フォレストバンク。不揃いの農産物とは、形が歪だったりキズがついていたりする規格外品のこと。色とりどりのジェラートは、その原料の80%以上が本来廃棄される予定だった野菜やフルーツだ。

創業の原点となったのは、代表の小林氏の子ども時代まで遡る。祖母の住む九州で、美味しい野菜や果物をお裾分けしてくれた農家の人たちが、高校生になる頃には次々と廃業していった。高齢化だけでなく、収益の不安定さから農業を断念する姿に胸が締め付けられたという。

「このままでは日本の農業が衰退してしまう。何か自分にできることはないか」。そんな想いから起業を志すようになった小林氏。大学卒業後はIT企業に勤務する傍ら、休日を利用して全国の農家を訪ね歩いた。当初は自身が農家になることも考えていたが、やがて農業全体の問題を“構造的に”解決する方法を模索するようになる。そこで、「廃棄予定の作物がそのまま利益になれば、多くの農家に喜んでもらえるのでは」というシンプルな発想から行き着いたのがジェラートの製造・販売だった。

廃棄予定の農産物を買い取り、収益を安定化。事業としての農業を強く後押しする。

「青果との違いは『いつまでに売らなければならない』という制約がなく自由なこと」と小林氏は語る。ジェラートは20個からの小ロットで生産でき、地産地消のオリジナル商品としての開発も可能。47都道府県の小規模農家と、300社を超える取引先がジェラートで繋がる。フードロスを削減しながら農家は収益を確保でき、消費者は商品を楽しむことができる。現在は大阪府下で3つの工場を稼働させ、ジェラートのみならず、スムージーやポタージュなどの商品もラインナップ。おいしさと話題性を兼ね備えた商品として、支持を集めている。

食品ロス問題を解決しながら「美味しい!」を全国に届ける。

レシピの開発や販売動線の設計、パッケージデザインまで、トータルで手掛けられることもフォレストバンクの強みだ。ITと農業は一見縁遠いように見えて、実は好相性。肥料の散布や出荷管理、さらには農家の声を発信するホームページの制作まで、さまざまな形でITが活用されている。「必ず何かの役に立つと思い、IT業界で経験を積みました。ただし、どれほど優れたシステムでも、農業の実情を理解していなければ役に立つことはできない。ITが押し売りになってはいけないのです」。そのため、農家側のインターフェイスを極力わかりやすい設計にして、使いにくさや拒絶感を抱かせないよう工夫を重ねている。これも、実際に土にまみれ、自らも畑を耕してきた小林氏ならではの視点だ。

現在では、各地の小規模農家から「不揃い品を買い取ってほしい」と声が寄せられ、販売先も大手チェーンをはじめ全国に拡大。世界的にも類を見ないほど丁寧に育てられ、こだわりの詰まった日本の農作物を、捨てることなく産地から消費者へ。今後も全国の農家と消費者を結ぶプラットフォーマーとしての挑戦がつづく。

代表取締役 小林亮氏

(取材・文/北浦あかね)

株式会社フォレストバンク

代表取締役

小林 亮氏

https://www.forest-bank.co.jp

事業内容/ジェラートなどの食品の製造・販売