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汎用システムで日本の製造業にインパクトを

2025.10.01

製造業のDXが叫ばれて久しいが、中小企業にとっては依然としてそのハードルは高い。なぜならシステムを導入しようにも、業種や製品によって仕入れから生産、出荷までのプロセスが異なり、それぞれに合わせたカスタマイズが必要となるため、開発費用が高額になってしまうからだ。永原氏は、「製造業向けのシステム開発はスクラッチ開発(ゼロからの開発)でしかできない」という従来の常識を打破し、どの企業でも導入しやすい汎用システムを市場に送りだしたイノベーターだ。

代表取締役 永原 宏紀氏

永原氏の経営者としての素養は、父親、そして新卒で入社したキーエンスから受けた影響が大きい。システム開発の会社を経営していた父親から高校生の時に「これからはI T業界が重要になる」と聞かされ、自らプログラミングの勉強を始め、自分も経営者になりたいと思うようになった。キーエンスでは営業力と事業運営のスキルを磨き、事業部で全国1位の成績をあげた。中でも「ひとつの経営理念に対して全社員が圧倒的にコミットする」という企業文化の大切さを肌で学んだ経験は、現在の経営姿勢に大きく影響を与えている。

キーエンス退社後、25歳で父親の会社に入社した。システム開発の営業に携わるうちに、製造業に特化したシステム開発を任されることになった。製造業の現場を知るほど「アナログな現場が多く、受託開発でしか対応できない領域であること」を痛感したという。一方で、「だからこそ、いずれ製造現場のIT化の波が必ず来る。そして、どこも手がけていない汎用システムこそ自分が取り組むべき分野だ」との確信に至った。キーエンス時代に2,000社以上の工場を訪問し、父親の会社で300社以上のシステム導入を経験。現場を知り尽くしていることが武器になった。

汎用システム開発に向けて自らを追い込むため、2017年に父親の会社から独立。当初は受託開発で収益を確保していたが、最後は全て断ち切り、退路を断つ形で開発に専念した。そして2021年に、あらゆる製造現場に対応するため、設定によって切り替え可能な柔軟なシステム設計を実現した完全ノンカスタマイズのクラウドパッケージシステムをリリース。「製造業の収益10%改善と、従事者の年収30%向上」をうたい文句に、導入先を順調に増やしている。

成長フェーズを迎えた現在、2年半前と比べて売上げは4.5倍に拡大し、組織も20人から120人以上へと急増した。永原氏は「今後は、販売管理機能やSFA(営業支援ツール)も追加し、製造業の収益改善に貢献していきたい」と語り、プロダクトのラインナップ拡充を進めている。「製造業DX に真正面から取り組み、日本経済にインパクトを与えるデジタルイノベーションを実現する」道へと邁進を続ける。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
※掲載写真は原則編集部にて撮影していますが、取材先企業からご提供いただいた写真が含まれている場合があります。

株式会社ネクスタ

代表取締役

永原 宏紀氏

https://smartf-nexta.com

事業内容/製造業向けクラウドシステムの開発・提供