幅広い分野で事業と気象データをつなぐ
地域ごとの天気予報や、時間ごとの雨雲の動きなどが簡単に手に入るようになり、わたしたちの日常生活にも欠かせない情報となった気象データの数々。これらの元になる観測データは気象庁が持っており、そのデータを民間の気象関連サービス会社が購入し、独自の予報などに役立て、提供している。だが、YuMakeはそうした関連会社とは一線を画し、気象データをさまざまなビジネスの現場につなげる事業で独自色を打ち出している。
例えば気象庁がホームページで公開しているより精緻で多様なデータの提供もその一つ。日射量や日の出日の入りなどの細かいデータもあり、これらを扱いやすいデータの形に変換して現場に提供している点も特長だ。日射量は太陽光発電を運用・管理している企業、日の入り時刻のデータは夕日の名所として有名な商業施設のHPで使われるなど多岐にわたる。
過去の気象データの活用事例も多く、タクシーやトラックドライバー向けに乗車・運送ルート上で過去にヒヤリハットの多かった地点の情報を蓄積、共有するアプリに過去の気象状況を組み合わせることで、どのような時間・気象状況の時に事故が起こりやすいかについても把握できるようになった。
アパレル小売会社用の在庫管理アプリ向けには、過去の売上げと気象状況の分析をもとに予報に基づいた受発注予測データを提供できるようになった。「風の強い日に売上げが変わるという傾向から、実際の気温とは異なる体感温度が売上げを左右していたということもわかりました」とデータ分析による新たな気づきも得られるという。
また、奈良県の特産である柿の栽培状況を可視化するための「柿生産スマート化コンソーシアム」にも参加。センサーを活用し気温や湿度の推移と柿の成熟度合いから最適な収穫時期を予測するシステムの開発にも携わっている。データを活用し、経験やノウハウに頼らない農業をめざすことで、就農のしやすさや生産性向上をめざしている。
子どもの頃から将来は気象に関わる仕事につきたいと考えていた佐藤氏は、SEの経験を生かしたアイデアで「気象×システム」という事業に辿り着いた。
現在、大手企業と共にマーケティング領域に気象の情報を掛け合わせる研究を行うなど、さまざまな業種から問い合わせが入っており、「天気はあらゆることに関わっている」と実感しているだけに「スーパーが雨の日にクーポンを出したり、温度や湿度によって工場の設備の故障を予測するところにも役立てることもできる」。気象データが活躍する舞台はまだまだ広がりを見せそうだ。
【 2025年 自社はこうなる 】
独自予報できる許可も取得。あらゆる場で気象データを活用できるサポートをしている。
(取材・文/山口裕史)